研究概要 |
本研究では以下のことが分かり日本癌学会、米国癌学会で発表した。①FR901464(以下FR)がヒト大腸癌細胞株に対して強い抗がん作用を有すること。②FR耐性細胞はSF3B1遺伝子のコドン1074のミスセンス変異を有しており、他の部位の変異は感受性に関与していないこと。③FR耐性は5-フルオロウラシルやオキサリプラチンに対する交叉耐性を有さないこと。④大腸癌患者、大腸がん細胞株での検討から大腸癌ではSF3B1遺伝子変異が極めてまれであること(DLD1細胞株ではあり)。⑤遺伝子導入発現に与える影響はヒストン脱アセチル化酵素が発現を増強させるのに対して、FRではその効果は一定ではないこと。⑥ヌードマウス大腸癌皮下腫瘍モデルを用いた実験ではFRは毒性から十分な抗腫瘍効果を示せなかったが、FR耐性細胞では親細胞に比べて腫瘍増殖が有意に抑制されること。⑦マイクロアレイ解析からFRはCell cycle, Fanconi anemia, Ubiquitin mediated proteolysis, Homologous recombination, Nucleotide excision repair, Oocyte meiosis, Basal transcription factors, Endocytosisに関係するパスウェイを強く抑制すること。⑧FR耐性細胞ではFRによる遺伝子変化とは全く関係の無い遺伝子が影響を受けており、Metabolism of xenobiotics by cytochrome P450,Type I diabetes mellitusに関係する経路が増強されていること。 これらの結果からSF3B1阻害剤はコドン1074に変異を持たない悪性腫瘍に非常に効果があることが示され、今後の発展が期待される。
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