研究課題/領域番号 |
23591976
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研究機関 | 川崎医科大学 |
研究代表者 |
吉田 和弘 川崎医科大学, 医学部, 講師 (10220633)
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研究分担者 |
山辻 知樹 川崎医科大学, 医学部, 准教授 (40379730)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 小腸大腸肛門外科学 |
研究概要 |
1)アミノ酸制御ミルクが新生マウスに与える影響の評価:腸管増殖因子として働きうることを既に報告しているロイシン、アルギニン、およびグルタミンを選択的に欠如、あるいは付加したアミノ酸ミルクを調整し、新生マウスに対し授乳した。その結果、グルタミン欠損ミルクを投与されたマウスに致死的な出血性腸炎が出現した。グルタミンが腸管に与える影響を検索するため、グルタミンを付加したミルク、通常のミルク、グルタミンを欠損したミルクの3群に分けて新生マウスの観察を行ったところ、グルタミン欠損ミルクを与えられたマウス28匹中6匹(21%)に出血性腸炎が出現した。通常ミルク群では1匹(3%)に同様の所見がみられたが、グルタミン付加群では全く見られなかった。現在腸管・肝臓をはじめ消化器・免疫担当臓器の病理学的解析を行っている。さらに細胞増殖因子に関わる免疫組織学的染色、さらに電子顕微鏡による解析を加える。また、各組織において、細胞増殖、細胞周期あるいは細胞死に関わる分子の発現をWestern Blot法を用いて解析中である。2)小腸腸管上皮培養細胞におけるアミノ酸を介する細胞増殖シグナルの解析・検討:腸管に対するアミノ酸シグナル伝達系を解析する培養細胞として、ラット胎児より確立された腸管上皮細胞であるIEC6を用いる。グルタミン濃度を0,0.4nM,4nMに設定し、IEC6を培養したところ、24-48時間でグルタミン欠失による明らかな増殖抑制が認められた。グルタミン欠失によるIEC6の細胞増殖抑制機構を解明するため、細胞増殖に関わる分子の発現をWestern Blotting法により行い、flowcytometryにより細胞周期やアポトーシスとの関与を解析中である。3)これまでに解明された結果に考察を加え、学会および誌上発表の準備中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1)アミノ酸制御ミルクが新生マウスに与える影響の評価:グルタミン欠損ミルクを投与されたマウスに出血性腸炎が出現し、その頻度についてはおおむね判明したが、特異的な発症機構については現在検索中である。各臓器の病理学的解析に加え、免疫組織学的染色、さらに電子顕微鏡による解析を加える。さらに各臓器におけるタンパク発現をWestern Blotting法により行うことによりさらなる知見が集積されると考えている。2)小腸腸管上皮培養細胞におけるアミノ酸を介する細胞増殖シグナルの解析腸管上皮細胞であるIEC6においてグルタミン欠失による増殖抑制が認められたが、現在グルタミン欠失によるIEC6の細胞増殖抑制機構を解明するため、細胞増殖に関わる分子の発現をWestern Blotting法により確認する必要がある。さらにflowcytometryにより細胞周期やアポトーシスとの関与を解析する予定である。以上より研究目的は当初の予定通り、おおむね順調に進展していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
1)アミノ酸制御ミルクが新生マウスに与える影響の評価:前述したとおりグルタミン欠損ミルクを投与されたマウスに出血性腸炎が出現し、その頻度についてはおおむね判明したが、その発症機構について分子細胞学的な検索が必要である。今年度以降は臓器の病理学的解析に加え、免疫組織学的染色、さらに電子顕微鏡による解析を加える予定である。また、各臓器において細胞増殖に関わるタンパク発現をWestern Blotting法により行い、増殖シグナルの解明を行うこととしている。2)小腸腸管上皮培養細胞におけるアミノ酸を介する細胞増殖シグナルの解析腸管上皮細胞であるIEC6においてグルタミン欠失による増殖抑制が認められた。今後グルタミン欠失によるIEC6の細胞増殖抑制機構を解明するため、細胞増殖に関わる分子の発現をWestern Blotting法により確認している。さらにflowcytometryにより細胞周期との関連やアポトーシスとの関与についても解析する必要性がある。
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次年度の研究費の使用計画 |
アミノ酸制御ミルクが新生マウスに与える影響を解明する実験において、グルタミン欠失マウスに出血性腸炎が発症することが判明した。このような生体所見の頻度には通常個体間でのばらつきが大きく、当初の予定ではその頻度の確定に時間がかかる可能性があると予想していたが、比較的順調に進捗したため、実験動物購入費にかかる費用の一部支出が抑えられた。一方、小腸腸管上皮培養細胞におけるアミノ酸を介する細胞増殖シグナルの解析については、IEC6細胞の培養手技の難易度が若干高く、再現性のあるデータの確定に時間を要した。そのため、細胞増殖に関わる分子の発現を確認するために行うWestern Blotting法やflowcytometryについては本年度以降に行う必要がある。よってこれらの実験に関わる設備と細胞・分子生物試薬費が次年度以降に必要となる。
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