研究課題
多発大腸腺腫の臨床所見から家族性大腸腺腫症(FAP)と診断されながら、生殖系列にAPC変異が同定されない症例(APC変異(-))が、30%程度存在する。欧米では、このような症例にMUTYH変異が報告されている。日本人では、MUTYH変異による多発大腸腺腫についての知見が不足しているため、30個以上の腺腫を有しながら生殖系列にAPC 変異(-)の14例について解析を行った。APC遺伝子の体細胞モザイク変異を鑑別した上で、MUTYH変異についてPCR-ダイレクトシーケンス法、エクソン単位の欠失等の有無をMLPA法により調べた。APCの体細胞モザイク変異は3例で確認された(21%)。残りの11例中、MUTYH変異については、1例で2カ所のミスセンス変異(P18LとG25D)を同定したものの同一アリル上にあり、明らかな病的変異を両アリルに有する症例はなかった。また、大規模な欠失等も認めなかった。一方、IVS10-2A>Gヘテロ接合体は2例あった(18%, この他にAPC体細胞モザイク症例中にも1例)。このバリアントは欠失タンパク質を産生するため、罹患リスクを検討した。その結果、70歳以上で癌罹患歴のない115人のうち5例に、このヘテロ接合体が認められた。APC変異(-)群との比較から、罹患リスクはオッズ比4.89であったが、95%信頼区間は0.83-28.8となり、有意差は認められなかった。一方、APC変異(+)のFAP 25症例中(同一家系除く)には1例も認められなかった。十分な症例数がないものの、仮に生殖系列APC変異の有無それぞれについて、IVS10-2A>Gヘテロ接合体の出現率を比較すると、APC変異(-)では5%の有意水準でコントロール群と異なり、APC変異(+)群ではコントロール群と有意差を認めなかった。今後、症例をさらに蓄積し、罹患リスクへの関与を検証する必要がある。
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Japanese Journal of Clinical Oncology
巻: 44 ページ: 602-606
10.1093