研究課題/領域番号 |
23591983
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研究機関 | 山梨大学 |
研究代表者 |
松田 政徳 山梨大学, 医学部附属病院, 講師 (80242642)
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研究分担者 |
雨宮 秀武 山梨大学, 医学部附属病院, 助教 (70377547)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 日本住血吸虫症 / 肝細胞癌 / 肝内胆管癌 / 肝切除 / 免疫抑制状態 / 腫瘍免疫 |
研究概要 |
本研究では、慢性日本住血吸虫症の肝癌切除後の患者の予後に与える影響を臨床病理学的、免疫学的観点から明らかとすることを目的とする。以下、平成23年度の研究実績の概要を実施計画に沿って記載する。1.日本住血吸虫症併存肝細胞癌切除症例の臨床病理学的検討2.肝内の腫瘍免疫と線維化に対する慢性日本住血吸虫症の影響の解明 上記の二項目については平成23年度の研究の結果以下の結果を得た。過去3年間の初回肝切除症例79例を対象として検討を行なった。切除標本の病理学的検討より慢性日本住血吸虫症併存者は14名(17.7%)で以前より減少傾向であった。日本住血吸虫症併存群と非併存群において臨床病理学的、免疫学的因子を比較検討したところ、日本住血吸虫症併存群は有意に高齢で、赤血球数、IgM値が有意に低値で、末梢血CD19陽性リンパ球が有意に低下していた。肝機能検査、各種腫瘍マーカー、CD3、CD4、CD8、CD56陽性リンパ球比率、NK活性には差を認めなかった。さらに、肝細胞癌の病理学的所見にも差は認めなかったが併存群で肝硬変の合併が低率であった。以上のことから、慢性日本住血吸虫症の既往のある肝癌患者は高齢で、造血機能やB細胞系に何らかの障害がある可能性が示唆された。3.胆管癌発症に及ぼす慢性日本住血吸虫症の影響の解明 平成23年度は、肝細胞癌と肝内胆管癌の同時性、異時性重複癌:臨床病理学的特徴と予後について臨床病理学的検討を行った。その結果、重複癌患者は慢性日本住血吸虫症患者に有意に多く、肝細胞癌患者における胆管癌発生のリスクファクターである可能性が強く示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
慢性日本住血吸虫症併存肝細胞癌切除症例の臨床病理学的検討を行い慢性日本住血吸虫症患者の造血機能やB細胞系に何らかの障害がある可能性を見出すことができ、さらに、慢性日本住血吸虫症患者は胆管癌のリスクを持っていることが証明できたため。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、免疫機能の解明を肝組織及び肝細胞癌組織に拡大し、これらの組織中の免疫担当細胞のプロファイリング、および機能を多角的に解明していく予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
免疫染色に必要な抗体(10種類程度)、免疫組織染色キット及びフローサイトメトリー用の細胞機能計測用試薬及び蛍光抗体(15種類程度)を購入予定。 また、癌幹細胞の遺伝子発現の検討に必要なPCR試薬(6種類)及び細胞の分離、培養用の細胞生物学的試薬も購入予定である。 ガラス器具、プラスチック器具の不足分も購入する予定である。
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