本プロジェクトにおいては、肝実質細胞機能活性化に関与する肝Kupffer細胞を適切に制御することが必至である。これまでの研究でガドリニウムクロライド投与により肝Kupffer細胞の活性化の制御を試みてきた。しかし、この方法で肝Kupffer細胞の活性化を抑制し、炎症による肝実質細胞の障害を制御することは可能になったが、肝不全という病態のなかで肝Kupffer細胞を活性化する必要がある場合の方法の確立が急務であることが明らかになった。本研究が最終目標とする人工肝補助装置開発に最も重要な点は、肝Kupffer細胞の活性度を病態によって自由に操作することを可能にするということであり、肝Kupffer細胞の活性化抑制が達成された時点で肝Kupffer細胞の活性化も必須であることが明らかになった。そこで新たに肝Kupffer細胞に対する活性化因子を模索する必要があると判断した。肝Kupffer細胞を活性化する様々な因子としてサイトカインを含めて解析したところ、granulocyte colony stimulating factor (GCSF)が肝Kupffer細胞の活性化に重要な役割を担っていることが明らかになりこれを基本に研究を展開した。その結果、GCSFは肝細胞再生を促進することがGCSF knockout mouse(op/op mouse)の検索から明らかになった。さらにその機序が肝Kupffer細胞を活性化し新生血管を誘導することにあることを明らかにした。さらに新生血管の増生に関与するのはIL-17 knockout mouseを使用しての研究から 活性化された肝Kupffer細胞から産生されるIL-17であることも明らかにした。IL-17の適切な投与により人工肝補助装置における肝Kupffer細胞の活性化のためのmodalityが確立された。
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