切除不能肝腫瘍に対する凍結治療の際に、非処置部においても腫瘍縮小効果がみられた臨床経験を経て、採血結果等から抗腫瘍免疫賦活の関与を想定してきました。この度は、その詳細なメカニズムと、効果発現の最適な環境設定を明確にすることを目的として、マウスでの研究を計画いたしました。以下に現在の進捗状況をご報告いたします。 1)CT26大腸癌細胞株をマウス皮下に注入して作成した皮下腫瘍モデルにて検討しました。CT26細胞を凍結融解処理し完全に細胞が破壊することを確認した癌組織ペーストを、毎週腫瘍近傍に注入する群(凍結群)と、PBSを注入するコントロール群(非凍結群)での比較を行いました。昨年度に追加し、腫瘍重量(g)を計測しましたところ、4週目の凍結群5.7±1.6に対し、非凍結群が6.7±2.1と明らかな治療効果の発現を確認いたしました。また各治療間隔における腫瘍体積の増加率の平均では、凍結群は非凍結群を60%に抑制しておりました。 2)癌細胞ペースト投与量を増やすと逆に免疫寛容を誘発するとの前回までの推察を裏付けるべく、ペースト量を調整し4週間観察した所、中等量ではコントロールとほぼ同程度であったのに対し、半量では25%減少させる一方で、倍量では逆に25%の腫瘍増大を確認しました。 3)凍結治療による免疫学的機序の系時列的変化を観察する目的で、治療後0、6、12、24時間後の各マウス皮下腫瘍を採取し、腫瘍免疫に関わりの深いIL-2とTNF-αの発現をWestern Blottingにて確認しました。その結果、IL-2は1回目及び2回目治療後、TNF-αは初回治療時のみの、いずれも12時間後に発現することを確認しました。なお同反応は、3回目以降の治療では認められませんでした
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