研究課題/領域番号 |
23591989
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
吉住 朋晴 九州大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (80363373)
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研究分担者 |
調 憲 九州大学, 大学病院, 講師 (70264025)
武冨 紹信 北海道大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (70363364)
内山 秀昭 九州大学, 大学病院, 特任講師 (70380425)
池上 徹 九州大学, 大学病院, 助教 (80432938)
前原 喜彦 九州大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (80165662)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | オートファジー / 肝再生 |
研究概要 |
研究目的:細胞内蛋白質の分解と再編成に重要な働きを担っているオートファジーに着目し、正常肝及び病的肝(脂質代謝異常に基づく脂肪肝・非アルコール性脂肪肝炎・糖尿病・大量肝切除後など)の再生におけるオートファジーの役割を明らかにし、病的肝の再生過程におけるオートファジーの分子機序解明、を目的として研究を計画した。初代培養系の肝細胞をHGFで刺激すると、オートファジーが誘導された。1. オートファジー抑制による肝細胞内ATP濃度と細胞周期の変化:HGFで刺激した初代培養系肝細胞にAtg4Bをレンチウイルスを用いて導入し、、オートファジーを抑制する事により、肝細胞内ATP濃度の低下とS期肝細胞の減少(23.6%から8.2%)を認めた。2. オートファジー抑制によるミトコンドリア障害及びβ酸化の低下:HGFで刺激した初代培養系肝細胞にAtg4Bをレンチウイルスを用いて導入し、オートファジーを抑制したところ、ミトコンドリア形態の変化と膜電位が低下した肝細胞の増加(20%から38%)を認めた。また、RT-PCRによるβ酸化関連酵素の発現の検討により、オートファジーを抑制する事で、β酸化律速酵素であるMCADとCPTの発現低下、遊離脂肪酸の活性化に関与するL-FABPの発現低下、遊離脂肪酸の合成に関与するFASとACCの発現増加を認めた。以上の結果から、オートファジー抑制により、細胞内ATP濃度の減少と細胞周期遅延、ミトコンドリア障害とβ酸化の低下が明らかになった。つまり、肝細胞内でHGFによる再生シグナルが入ると、オートファジーによるオルガネラ保護により、脂肪酸β酸化によるミトコンドリアでのATP産生が惹起されることが明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1. 肝再生過程における蛋白質合成のためのアミノ酸プール及び脂肪酸プールに対するオートファジーの役割2. 肝再生過程におけるオートファジーのミトコンドリア保護によるATP産生を明らかにする事を今年度の実験計画とした。上記のごとく、これまでにオートファジー抑制により、細胞内ATP濃度の減少と細胞周期遅延、ミトコンドリア障害とβ酸化の低下を明らかにした。つまり、肝細胞内でHGFによる再生シグナルが入ると、オートファジーによるオルガネラ保護により、脂肪酸β酸化によるミトコンドリアでのATP産生が惹起されることを明らかにしており、実験計画はおおむね順調に進展していると考える。
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今後の研究の推進方策 |
1. 肝特異的オートファジーノックアウトマウス(Atg5)を作成し、GFP-LC3型レンチウイルスベクターの導入(オートファジーの再活性化)を行い、オートファジーによる遊離アミノ酸プール・遊離脂肪酸プールの回復を確認する。同様にオートファジーによる肝組織ATP値、ミトコンドリア膜のpermeabilityの回復及びROSの低下を確認する。2. オートファジー依存的な、ミトコンドリアを介したβ酸化及び肝脂肪分解によるエネルギー産生を検討する。肝切除後の再生肝においては、一過性に肝細胞内脂肪沈着が惹起され、エネルギー源となると考える。70%肝切除後肝再生モデル(C3H/HeNマウス)において再生肝を経時的に採取。ズダンIII染色及び肝内中性脂肪の定量を行い、オートファジーKOによる肝再生に伴う肝脂肪化への影響を検討する。Real-time PCR法によるミトコンドリアβ酸化に関わる蛋白・酵素群(PPARα、Acyl coenzyme A oxidase 1, Calnitine palmitoyltransferase 1A, ACSL1など)の定量を行い、オートファジーKOによるβ酸化の減少を確認する。GFP-LC3型レンチウイルスベクターの導入を行い、オートファジーによる肝脂肪分解の回復及びβ酸化によるエネルギー産生の回復を確認する。
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次年度の研究費の使用計画 |
実験動物関連費用:マウスを用いた動物実験を行うため、動物購入費は必須である。C3Hマウスの購入(1頭2550円)・飼育(本実験施設では1頭 5円/日)に必要な費用と、肝切除モデルをその都度行った上で検体を採取する事を考慮すると、実験動物関連に研究費が必要である。生化学的試薬の費用:オートファジー蛋白質・細胞周期関連の蛋白質・ミトコンドリア関連の実験系については、FACS・蛍光免疫染色・ウエスタンブロットにて評価するため、それぞれに特異的な抗体や実験キットの購入が必要である。Real-time PCRに要する費用:ミトコンドリアβ酸化に関わる蛋白・酵素群の定量として、Real-time PCRを行う予定である。施行する上で、至適primer (reverse, forwardの2種)の購入、さらに関連酵素などの購入が必要である。
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