研究課題/領域番号 |
23591992
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研究機関 | 鹿児島大学 |
研究代表者 |
上野 真一 鹿児島大学, 医歯(薬)学総合研究科, 准教授 (40322317)
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研究分担者 |
夏越 祥次 鹿児島大学, 医歯(薬)学総合研究科, 教授 (70237577)
迫田 雅彦 鹿児島大学, 医学部・歯学部附属病院, 助教 (40418851)
石神 純也 鹿児島大学, 医学部・歯学部附属病院, 講師 (90325803)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | HCC / HMGB1 / RAGE[ |
研究概要 |
i)肝細胞癌(HCC)のHMGB1発現と悪性化の関係を、臨床検体75例を用いて検索した。(1)HCCにおけるHMGB1蛋白とmRNA発現の有無:WBとRT-PCRを用いて、HMGB1蛋白とHMGB1 mRNAの発現を正常肝、非癌部と癌部で確認し、その全てにおいて発現を認めた。(2)癌部、非癌部、正常肝でのHMGB1発現度比較:75例のHCC患者の癌部と非癌部、7例の正常肝でHMGB1発現の定量化を行った。癌部と非癌部(CHまたはLC)におけるHMGB1の平均値は正常肝と比較して高値となる傾向がみられた。癌部と非癌部との間では有意な差はみられなかった。(3)HMGB1発現レベルと臨床病理学的因子との関係:HMGB1の発現と75症例の臨床病理学的因子を比較し、門脈浸潤、分化度、腫瘍マーカー(PIVKA-II)で有意差がみられた。すなわち、門脈浸潤陽性群は、門脈浸潤陰性群よりも低値。低分化癌は、高分化群より低値。PIVKA-II上昇群は、正常群よりも低値。またTNM stage III/IVの方が低値傾向. (4)HMGB1発現と細胞増殖活性:細胞増殖活性とHMGB1発現の相関図は、以前検討を行ったRAGE(HMGB1レセプター)の推移と一致した。また分化度が下がるとKi-67陽性細胞率は上昇し、細胞増殖活性は上昇したが、 逆にHMGB1の発現は低下しており、以上のことから、HCC細胞内のHMGB1発現は細胞増殖能には明らかな関与のないことが示された。まとめると、肝臓におけるHMG1発現は、正常肝、肝硬変ならびにHCCすべてにおいてみられ、肝硬変やHCCで上昇を認める。しかし、HCC悪性度変化やその増殖能には明らかに関与しておらず、どちらかというと肝発癌から腫瘍形成初期に主に関与しているようにみえる。この推移は、そのレセプターであるRAGEの動態と酷似している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
上記に述べた研究実績概要と別に、HCCにおけるマクロファージ進展と悪性度の関連も検討され、以下のような結果を得ている。1)肝癌においてはCD163/CD68比は予後を層別した。2)その低値群は予後不良で、FRβ陽性頻度が高い。またFRβ陽性群ではim頻度が高い傾向にあり、単結節周囲増殖や多結節癒合型が有意に多かった。3)CD68陽性細胞の中でもFRβ陽性細胞はHCC高悪性度との関連が示唆された。ゆえに本研究費の大きな目的である1)HCCの炎症性メデイエーターの関連と悪性化に及ぼす影響、2)もしその主体がマクロファージなら、それをFRβイムノトキシンで攻撃するという2点に関して、着実に結果が得られつつあることになる。
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今後の研究の推進方策 |
今後、 HMGB1からTLR4の働きを中心にin vivo で検討する。この際に、臨床検体でHMGB1の働きが大きかった腫瘍形成初期から逆相関に至る腫瘍進展期間において、(1)浸潤MØとの関係や(2) TLR4を介したVEGFやTNF-a,IL-6などのCytokineの動きや血管新生(免疫染色、PCR)について、Wild type とTLR4 K/Oマウスの間で比較する。
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次年度の研究費の使用計画 |
動物実験が主体となり、このサンプルに対して分子生物学的実験を検討することから1,000,000円を計上している。残りの500,000円の多くは、上記の発表旅費や論文校正に使用される。
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