「研究の目的」は、キマーゼと非アルコール性脂肪性肝炎(nonalcoholic steatohepatitis : NASH)の脂肪肝および肝線維化との関連性を明らかにし、キマーゼ阻害薬のNASHの進行予防効果または治療効果を検討することであった。 メチオニン-コリン欠乏(MCD)食負荷NASHモデルをハムスターにて作製し、MCD食負荷後経時的に①血中のAST値とALT値の増加、②肝臓の脂肪滴の増加、③肝臓の線維化面積の増加、④肝臓のマロンジアルデヒド(MDA)値、コラーゲンI、コラーゲンIII、アンジオテンシンII(AII)の増加、⑤肝臓のキマーゼ活性の増加を確認し、キマーゼとNASHの病態進行との関連性を示した。さらに、経時的に肝臓のキマーゼ活性とNASH病態の進行が相関することを踏まえ、キマーゼ阻害薬によるNASHの進行予防または治療効果を解析した。具体的には、MCD食を12週間負荷してNASHモデルを作製、その時点で一部の動物を解析した。残りのNASHモデルにはキマーゼ阻害薬またはプラセボを投与し、さらにMCD食を12週間継続し、NASHの病態進行に対するキマーゼ阻害薬の影響を解析した。MCD食負荷後12週の時点で、①血中のAST、ALT値、②肝臓の脂肪滴面積、③肝臓の線維化面積、④肝臓のMDA値、コラーゲンI、III、AII、⑤肝臓のキマーゼ活性、の全ての項目が増加しておりNASHモデルが再現性良く形成される事が確認された。MCD食負荷後24週(薬物投与後12週)の時点で、プラセボ群では、12週の時点に比して、上記①から⑤の項目全てで更に増加したが、キマーゼ阻害薬投与群では全ての項目が、プラセボ投与群に比して有意に減少した。また、キマーゼ阻害薬群は、投薬前のMCD食後12週の時点における全ての項目を有意に減少させていたことより、キマーゼ阻害薬によるNASHの治療効果が強く示唆された。本研究成果は、第63回米国肝臓学会議(平成24年11月、米国、ボストン)にて発表し、また、Hepatology Researchに掲載された。
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