研究課題/領域番号 |
23592006
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
小泉 将之 京都大学, 医学(系)研究科(研究院), その他 (90512351)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 糖尿病 / GIP / GLP-1 |
研究概要 |
【目的】昨今、消化管粘膜上皮内分泌細胞から分泌され、膵β細胞でのインスリン分泌を刺激し血糖降下作用をもたらすインクレチンホルモンが、糖尿病治療として注目されている。インクレチンホルモンのうちGIP (glucose-dependent insulinotropic polypeptide) のとりわけβ細胞発生における関与を明らかにし、傷害されたβ細胞再生能の回復を目的とした治療的介入の可能性について検討すること、さらに膵癌進展におけるインクレチンホルモンの関与を検討することが本研究の目的である。【結果】(1)GIPのontogeny (胎児膵での経時的局在) を示すべく、CD-1マウス発生の各段階 (E9.5から18.5日) に胎児上腹部臓器を摘出し、GIP、GIPレセプターの発生膵における局在を検討した。GIPの発現はグルカゴン陽性細胞と一致し、一方GIPレセプターの発現はインスリン陽性細胞と一致した。これは胎性期膵においてグルカゴン陽性細胞からインスリン陽性細胞へとGIPによるシグナル伝達が行われる可能性を示唆するものと考えられた。(2)(3)胎性期におけるGIPのloss/gain of function実験を行うべく、実体顕微鏡下マイクロダイセクションテクニックを用いて胎性期 (E9.5から11.5日) のマウス胎児膵を摘出し、37℃5%CO2インキュベータで培養した。GIPのリガンド、レセプターそれぞれに対するsiRNAなどを用いてシグナル抑制状態を、外因性GIP投与によってシグナル過剰状態を作り出し、発生に関する影響を検討した。GIP siRNAの三次元培養系胎性膵における導入効率を確認したところ、十分に導入可能である事が示された。更にGIP中和抗体を導入したところ、インスリン産生が著明にブロックされた。現在、GIP投与時による膵発生への影響を観察中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
in situ RNA hybridization実験の条件設定、膵再生モデルマウスの確立に苦慮した。それ以外は概ね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
(1)胎性期膵におけるGIPのmRNAは経時的に増加することが確認出来たが、発現の局在を明らかにするために、in situ RNA hybridization実験を進める必要がある。膵再生モデルマウスの確立を行い、本年度実施出来なかった(4)GIPの膵再生モデルへの投与実験を行う。更に、次年度は動物実験だけでなくヒト組織を使った研究を計画しており、現在倫理委員会等に申請中である。
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次年度の研究費の使用計画 |
本年度実施出来なかった上記(1)(4)の実験を行うべく、20万円をH24年度に繰り越した。次年度は更に、ヒト膵癌切除標本を用いてGIP、GLP-1の発現検討を免疫組織染色やmRNA定量により行い、臨床病理学的因子との関連を統計ソフトウェアを用いて検討する予定である。
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