研究課題/領域番号 |
23592009
|
研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
西崎 正彦 岡山大学, 大学病院, 助教 (30379789)
|
研究分担者 |
藤原 俊義 岡山大学, 医歯(薬)学総合研究科, 教授 (00304303)
|
研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
|
キーワード | FHIT / PKC / 膵癌 |
研究概要 |
FHIT遺伝子を欠損している膵癌細胞株SUIT-2、S2-CP9、S2-VP10においてEZRIN, ACTINの発現をウェスタン・ブロッティング(IB)により確認した結果、いずれの細胞株でも両者の発現を認めた。EZRINの発現量が最も多く、細胞増殖能および浸潤能も強いS2-VP10を以後の実験系に使用した。FHIT発現アデノウイルスベクター(Ad-FHIT)、コントロールしてPBS、LacZ発現アデノウイルスベクター(Ad-LacZ)をS2-VP10に1000MOIで感染させ48時間後のcell viabilityをXTT assayにて差がないことを確認した。同時にGFP発現アデノウイルスベクター(Ad-GFP)1000MOI48時間でGFP発現効率が95%以上であることを確認し、遺伝子導入が確実に行われていることを実証した。S2-VP10にAd-FHITを感染48時間後の細胞質成分を用い抗PKC抗体により免疫沈降(IP)を行い、抗FHIT抗体でIBを行い、PKCとFHITが結合していることを証明した。同時に抗EZRIN抗体でIBを行ったが、コントロール群ではPKCとEZRINの結合を認めたが、Ad-FHIT感染細胞ではPKCとEZRINの結合を認めなかった。このことにより、FHITタンパクがPKCと結合することにより、PKCとEZRINの結合を阻害している可能性が強く示唆された。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
膵癌細胞株S2-VP10が3種類の細胞株の中で、細胞増殖能・浸潤能も強く、EZRIN強発現であったため、今回の実験系に最も適していることは比較的早期に判断できたが、cell viabilityに影響を与えず、かつ、95%以上の遺伝子導入を達成する至適条件を設定するまでに時間を要した。結果的にAd-FHITを1000MOIで感染48時間後でcell viabilityがコントロール群と変わらず、Ad-GFPを用いた同条件の感染効率が95%以上であることを確認し、以後のin vitro実験を開始した。今回の実験系では細胞質内タンパクの相互作用を解明するため、細胞膜成分、細胞質成分、細胞核成分と分画することが必要で、数種類の分画法を試し、最も確実に分画し、かつ、細胞質成分を量的に損なわない方法の選択・確立に時間を要した。以上により、研究計画はやや遅延しているが研究成果は着実に上がっている。
|
今後の研究の推進方策 |
23年度に予定していたアデノウイルスベクターを用いた強発現系でのin vitro実験の続きを速やかに行い、FHIT、PKC、EZRINの相互作用を証明する。次いで24年度に計画していたプラスミドを用いたより生理的に近い条件で同様のタンパクの相互作用が生じるかを確認する。in vivo実験でS2-VP10が転移モデルとして使用できるか検討し、転移モデルを確立する。次いで治療研究を行い、FHIT遺伝子治療が転移を抑制するかどうかを検証する。以上24年度に予定されている研究を遂行する。
|
次年度の研究費の使用計画 |
23年度に予定していた研究材料はそろっており、研究費の使用計画に変更はない。
|