研究課題/領域番号 |
23592013
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
難波江 俊永 九州大学, 医学(系)研究科(研究院), 共同研究員 (10467889)
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研究分担者 |
佐藤 典宏 九州大学, 医学(系)研究科(研究院), 共同研究員 (20423527)
大塚 隆生 九州大学, 大学病院, 助教 (20372766)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 膵癌 / 膵星細胞 / phenotype / PSC |
研究概要 |
膵癌において、近年癌間質相互作用によって浸潤や転移や抗癌剤耐性などが増すことが明らかとなった。当研究室では以前より膵臓間質に存在し、非常に重要な働きを持つ膵星細胞に着目し実験を行ってきた。癌細胞と同じように膵癌間質に存在する膵星細胞もその機能は一様ではないことがその過程において明らかとなった。。当研究室において治療抵抗性に関与するものや転移・浸潤に関与するものが存在することを見出した。本研究では膵癌の治療抵抗性や遠隔転移に関わる膵星細胞のphenotypeの解析を進め、その役割を解明した上で、特定の膵星細胞を治療標的とした膵癌の新たな治療戦略を創造することを目的としている。本年度は以前より進めてきたヒト膵癌組織からの膵星細胞の樹立をさらに進め、最終的に当研究室で50株以上を樹立し所有するに至った。それらに対し、膵癌細胞に特に影響を与える膵星細胞のマーカーとして期待されるCD10、CD29、CD44、CD90、CD105、CD117、CD271、CD280、Stro-1、VEGFR1などの多数の表面マーカーの発現解析を行った。現在解析を進めているが、CD10は癌細胞の浸潤能などの悪性度に寄与する因子と判明した。しかし正常細胞にも発現がみられるため、単独での治療標的としては困難であり、他の因子と組み合わせた標的治療が必要である。なお、現在解析中のCD271は、癌細胞との共培養によって細胞内でメッセンジャーRNAが増加し、しかし共培養の一定時間を過ぎると急速に減少していくことが確認できた。また、Invasion assayを応用した当研究室独自の方法により浸潤細胞・非浸潤細胞での分取を行ったところ、非浸潤細胞においてCD271が高いという特筆すべき結果を得た。この結果からCD271は癌細胞を抑制する可能性も考えられた。本年度は、膵星細胞の癌細胞との共存における機能解析を進めえた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
膵星細胞の機能解析を現在進めており、また当研究室では膵星細胞のセルソーターおよびAutoMACsを用いた分取技術を確立している。しかし、今年度の目標であった抗癌剤への耐性に関してはいまだ着手できていない。この大きな原因としては、膵星細胞のPhenotypeが分取後急速に元の発現率へと戻ることによる。代表的な例として、CD105は分取後5日後には元の状態へと戻った。膵星細胞Phenotypeの機能評価においてはこの問題を解決していく必要がある。
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今後の研究の推進方策 |
本研究の今後は機能解析、抗癌剤耐性への影響、共培養からの再純化を目標としている。現時点での問題点としては膵星細胞のPhenotypeに応じた分取後に早期にもとの発現率へ戻ってしまうこと。またマウスにおいて癌細胞との共移植後に再純化を試みるも、癌細胞の増加速度が強いためか膵星細胞が残らないことによる。対応としては分取後早期の実験使用や、shRNAによる導入、およびマウスより摘出時に迅速に破砕、細胞分取を行うことでの純化培養を目指す。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度は当初より予定していた癌細胞と純化した膵星細胞の共培養/共移植からの再純化と相互作用関連分子同定を目指す。またマイクロアレイによる網羅的な解析から膵癌の悪性度に影響を与える膵星細胞に特異的に発現する分子を同定し、レトロウイルスに組み込むshRNAを作成する。このshRNAの導入により治療実験をin vitro、in vivoにおいて行う。さらに、癌間質相互作用に関わる分子を標的とした治療実験を共培養、共移植を用いて行う。
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