研究課題/領域番号 |
23592015
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研究機関 | 熊本大学 |
研究代表者 |
高森 啓史 熊本大学, 大学院生命科学研究部, 准教授 (90363514)
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研究分担者 |
中原 修 熊本大学, 医学部附属病院, 助教 (40583042)
大村谷 昌樹 熊本大学, 大学院先導機構, 特任助教 (60398229)
坂本 快郎 熊本大学, 医学部附属病院, 特任助教 (00452897)
堀野 敬 熊本大学, 医学部附属病院, 非常勤診療医師 (60452900)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | IPMN / EZH2 / miR-101 / carcinogenesis |
研究概要 |
(1)膵癌細胞株におけるmRNAと蛋白レベルにおけるEZH2の発現の検討 ヒト膵癌細胞株8種類において、RT-PCR法およびウエスタンブロット法を用いて、mRNAレベルとタンパクレベルでEZH2の発現を検討した。ヒト樹立膵癌細胞株8種類(PANC-1, PK8, PK9, PK-59, KLM-1, MIA Paca2, PK-45P, Hs-700T)、すべてにおいてmRNAレベルおよび蛋白レベルにおいてEZH2の発現を確認できた。EZH2は他の臓器(膀胱癌、乳癌、前立腺癌、胃癌および咽頭癌)でも発現しており、癌の進行と転移に関与するとされている。膵癌においても発現していることから、悪性化において重要な因子であることが示唆された。(2)IPMNの切除組織を用いたポリコーム蛋白群発現の検討 膵IPMNにおけるEZH2の発現の意義を明らかにするため、免疫染色によるEZH2の発現解析を行った。免疫染色には54例のIPMN切除症例を対象とした。このうち、良性のIPMNが51病変、悪性のIPMNが19病変 (上皮内癌4病変、浸潤癌15病変)であった。腫瘍の核の染色率を比較検討したところ、良性部分では平均5.4%であったのに対し、悪性部分では上皮内癌では平均49%、浸潤癌では平均50%と良性部分に比較して有意に核の濃染を認めた。しかし、上皮内癌と浸潤癌部での核の濃染率に統計学的有意差は認めなかった。EZH2の過剰発現が、IPMNの癌化を促進していると示唆された。(3)microRNAによるEZH2発現の制御 癌細胞株MIA Paca2に対してmiR-101の導入を行ったところEZH2のタンパクレベルでの発現は抑制された。一方、Anti-miR-101を導入するとEZH2蛋白の発現は上昇した。このことはmiR-101がEZH2を正に制御していていることを示唆していると考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
IPMN切除標本の免疫染色にて良性部分に比較して悪性部分(上皮内癌、浸潤癌)ではEZH2の発現が上昇していた。また、膵癌細胞8株を用いた検討では全てにおいてmRNAレベル、蛋白レベルでEZH2の発現上昇を認めた。引き続き、IPMNの外科切除組織パラフィン包埋切片からLaser micro dissectionにて、adenoma, borderline およびcarcinomaの部位を選択的に回収して、miRNA-101とmiRNA-217の発現・消失を比較検討する予定である。
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今後の研究の推進方策 |
現在までに得られたデータに加え、以下の項目について検討する。(1)IPMNの発癌過程における過程におけるmiRNAの変化の解析 IPMNの外科切除組織検体としてパラフィン包埋切片からLaser micro dissectionにて、adenoma, borderline およびcarcinomaの部位を選択的に回収して、miRNA-101とmiRNA-217の発現・消失を比較検討する。(2) miRNAのPcG複合体蛋白制御の解析m iRNAとPcG複合体蛋白の関連を明らかにするために膵癌細胞株を用いる。前述した7種の樹立膵癌細胞株において、miRNA-101とmiRNA-217の発現状況を確認する。さらに、miRNA-101および-217を強制発現および発現抑制を行った場合のPcG複合体蛋白のmRNAレベルおよび蛋白のレベルでの発現を明らかにする。(3)癌過程におけるmiRNAとPcG複合体蛋白の変化の臨床応用 IPMN発癌過程におけるmiRNAとPcG複合体蛋白の変化を臨床に応用する。膵液細胞診や超音波内視鏡下生検で得られた材料を用い、miRNAとPcG複合体蛋白の発現を検討し、臨床診断に応用し、初期膵癌診断を目指す。(4)ピジェネティクス治療の可能性の検討 IPMN発癌過程におけるmiRNAとPcG複合体蛋白の変化からエピジェネティクス治療の可能性を検討する。miRNAとPcG複合体蛋白のプロファイリングの明かになった膵癌細胞株をヌードマウスあるいはSCIDマウスに移植して、miRNAやPcG複合体蛋白の発現を変化させることによる病態の変化を検討する。
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次年度の研究費の使用計画 |
今後の研究計画については先に示した研究項目を以下のような順序にて研究を進める予定である。平成24年度(1)IPMNの発癌過程における過程におけるmiRNAの変化の解析、(2)miRNAのPcG複合体蛋白制御の解析平成25年度(3)癌過程におけるmiRNAとPcG複合体蛋白の変化の臨床応用、(4)ピジェネティクス治療の可能性の検討
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