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2012 年度 実施状況報告書

発癌におけるマイクロRNAによるエピジェネティクス制御機構の解明

研究課題

研究課題/領域番号 23592015
研究機関熊本大学

研究代表者

高森 啓史  熊本大学, 医学部附属病院, 非常勤診療医師 (90363514)

研究分担者 中原 修  熊本大学, 医学部附属病院, 非常勤診療医師 (40583042)
大村谷 昌樹  熊本大学, 学内共同利用施設等, 准教授 (60398229)
坂本 快郎  熊本大学, 医学部附属病院, 特任助教 (00452897)
堀野 敬  熊本大学, 医学部附属病院, 非常勤診療医師 (60452900)
キーワードIPMN / EZH2 / miR-101 / carcinogenesis
研究概要

①ヒト膵癌細胞株8種類において、RT-PCR法およびウエスタンブロット法を用いて、mRNAレベルとタンパクレベルでEZH2の発現を検討した。ヒト樹立膵癌細胞株8種類(PANC-1, PK8, PK9, PK-59, KLM-1, MIA Paca2, PK-45P, Hs-700T)、すべてにおいてmRNAレベルおよび蛋白レベルにおいてEZH2の発現を確認できた。EZH2は他の臓器(膀胱癌、乳癌、前立腺癌、胃癌および咽頭癌)でも発現しており、癌の進行と転移に関与するとされている。膵癌においても発現していることから、悪性化において重要な因子であることが示唆された。
②膵IPMNにおけるEZH2の発現の意義を明らかにするため、免疫染色によるEZH2の発現解析を行った。免疫染色には54例のIPMN切除症例を対象とした。このうち、良性のIPMNが51病変、悪性のIPMNが19病変 (上皮内癌4病変、浸潤癌15病変)であった。悪性部分と良性部分の核の染色率を比較検討したところ、良性部分では平均5.4%(0-50%)程度しか核の染色が認められなかったのに対し、悪性部分では上皮内癌では平均49%(26-71%)、浸潤癌では平均50%(0-95%)と良性部分に比較して有意に核の濃染を認めた。また、増殖能を表すKi67にて同病変に対し、免疫染色を行ったところKi67とEZH2の発現に統計学的有意な相関関係を認めた。EZH2の過剰発現が、IPMNの腫瘍進展に関与していることが示唆された。
③癌細胞株MIA Paca2に対してmiR-101の導入を行ったところEZH2のタンパクレベルでの発現は抑制された。 一方、Anti-miR-101を導入するとEZH2蛋白の発現は上昇した。このことはmiR-101がEZH2を正に制御していていることを示唆していると考えられる。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

IPMN切除標本の免疫染色にて良性部分に比較して悪性部分(上皮内癌、浸潤癌)ではEZH2の発現が上昇していた。さらにEZH2の発現はKi67の発現と相関関係を認め、EZH2がIPMNの増殖能に正に関与していることが示唆された。
引き続き、IPMNの外科切除組織パラフィン包埋切片からLaser micro dissectionにて、adenoma, borderline およびcarcinomaの部位を選択的に回収してmiR-101の発現を検討し、carcinoma部位でmiR-101の発現が低下していた。また、膵癌細胞株MIA PaCa2においてmiR-101を抑制するとEZH2の発現がmRNAおよびタンパクレベルで抑制され、miR-101の低下がEZH2を負に制御していることが示唆された。

今後の研究の推進方策

現在までに得られたデータに加え、以下の項目について検討する。
①IPMNにおけるEZH2のシグナルとしての癌抑制遺伝子発現の解析  IPMNの外科切除組織検体に対し癌抑制遺伝子タンパクp27Kip1、p21WAF1、PTENに対する抗体で免疫染色を行い、EZH2によるヒストンタンパクH3K27のメチル化がどのような癌抑制遺伝子を介して制御されているのか明らかにする。
②癌過程におけるmiRNAとPcG複合体蛋白の変化の臨床応用  IPMN発癌過程におけるmiRNAとPcG複合体蛋白の変化を臨床に応用する。膵液細胞診や超音波内視鏡下生検で得られた材料を用い、miRNAとPcG複合体蛋白の発現を検討し、臨床診断に応用し、初期膵癌診断を目指す。
③ピジェネティクス治療の可能性の検討  IPMN発癌過程におけるmiRNAとPcG複合体蛋白の変化からエピジェネティクス治療の可能性を検討する。miRNAとPcG複合体蛋白のプロファイリングの明かになった膵癌細胞株をヌードマウスあるいはSCIDマウスに移植して、miRNAやPcG複合体蛋白の発現を変化させることによる病態の変化を検討する。

次年度の研究費の使用計画

該当なし

  • 研究成果

    (5件)

すべて 2012

すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 5件)

  • [雑誌論文] No donor and MEK inhibitor synergistically inhibit proliferation and invasion of cancer cells.2012

    • 著者名/発表者名
      Furuhashi S
    • 雑誌名

      Int J Oncol

      巻: 40 ページ: 807-815

    • DOI

      10.3892/ijo.2011.1243

    • 査読あり
  • [雑誌論文] The central vein access port and catheter in outpatient chemotherapy for colorectal cancer. A retrospective study of 101 patients.2012

    • 著者名/発表者名
      Sawayama H
    • 雑誌名

      Surg Today

      巻: 42 ページ: 29-34

    • DOI

      10.1007/s00595-011-0016-5.

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Portal vein embolization can prevent intrahepatic metastases to non-embolized liver.2012

    • 著者名/発表者名
      Okabe K
    • 雑誌名

      Hepatogastroenterol

      巻: 59 ページ: 538-41

    • DOI

      10.5754/hge09764.

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Liver hanging maneuver decreases blood loss and operative time in a right-side hepatectomy.2012

    • 著者名/発表者名
      Beppu T
    • 雑誌名

      Hepatogastroenterol

      巻: 59 ページ: 542-5

    • DOI

      10.5754/hge09737.

    • 査読あり
  • [雑誌論文] The expression levels of CD44v6 are correlated with the invasiveness of hepatocellular carcinoma in vitro, but do not appear to be clinically significant.2012

    • 著者名/発表者名
      Mima K
    • 雑誌名

      Oncology Lett

      巻: 5 ページ: 1047-1051

    • DOI

      10.3892/ol.2012.611

    • 査読あり

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公開日: 2014-07-24  

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