研究課題/領域番号 |
23592023
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研究機関 | 秋田大学 |
研究代表者 |
山本 浩史 秋田大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (10270795)
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研究分担者 |
山本 文雄 秋田大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (00127474)
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キーワード | 心筋虚血再灌流傷害 / 好気的代謝 / 二酸化炭素産生 / イオン移動 |
研究概要 |
開心術中心停止による心筋虚血再灌流傷害の主病態は再灌流時細胞内Ca2+過負荷であり、その原因は虚血中の細胞内アシドーシス(H+産生)がNa+/H+交換によるNa+流入、さらにNa+/Ca2+交換を介するCa2+流入を来すとされている。「再灌流時の好気的代謝復活による急激なCO2産生がmMオーダーのH+産生を生じさせ、Na+/H+交換を介するNa+流入を生じさせ、細胞内Ca過負荷に至る」という仮説を立て、新しい心筋保護法の開発に資するため、再灌流時好気的代謝中のNa+濃度測定と関連機能蛋白定量によって心筋傷害メカニズムを明らかにすることを目的とした。 今までは開心術中の血液心筋保護液注入中に冠静脈洞からサンプルを採取し、酸素含量、Na+濃度、K+濃度、Cl-濃度、HCO3-濃度、pHを測定し、再灌流時の酸素化時にイオン移動を示唆する所見が得られるかどうか検討した結果、酸素消費とともにNa+増大、K+低下、Cl-低下、HCO3-濃度不変、pH低下が認められイオン移動の存在が強く示唆された。またラット摘出潅流心モデルではNa+/H+交換抑制薬であるアミロライドが虚血後の再酸素化時(無酸素再灌流後の酸素化灌流)に投与されると心筋保護的に働くことから、Na+/H+交換が好奇的代謝の復活の際にイオン移動に大きくかかわっていることが判明した。 平成24年度はラット摘出潅流心モデルを用いて再灌流時におけるNa+/HCO3-共輸送の関与を検討した。再灌流時の緩衝液を重炭酸液からHEPES緩衝液に変更しても心筋保護的な作用が得られなかったことから、Na+/HCO3-共輸送が好奇的代謝の復活の際のイオン移動にかかわっていないことが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
細胞内イオン濃度測定装置を用いて虚血再潅流中の細胞内イオン濃度(Na+、Ca2+、pH)を評価可能にすることが、平成23、24年度の目標の一つであったが、精度的に測定法に困難な点がある。
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今後の研究の推進方策 |
1.好気的代謝の関与に関し好気的代謝抑制(ミトコンドリア抑制)薬を用いて検討する。ラット摘出灌流心モデルにおいてミトコンドリア抑制のための代謝阻害薬、低酸素によって再灌流中の細胞内Na+濃度、細胞内Ca2+濃度、細胞内pHがどのような影響を受けるかを、細胞内イオン濃度測定装置を用いて評価する。またCO2電極を用いて組織CO2分圧を測定する。 2.Na+イオン輸送系(Na+/K+ポンプ、Na+/Ca2+交換、Na+/HCO3-共輸送、Na+チャネル)の関与を検討する。ラット摘出灌流心モデル において他のNa+イオン輸送系を阻害する薬剤を用いて再灌流中の細胞内Na+濃度、細胞内Ca2+濃度、細胞内pHがどのような影響を受けるかを、細胞内イオン濃度測定装置を用いて評価する。またCO2電極を用いて組織CO2分圧を測定する。 3.再灌流中のcarbonic anhydrase活性、Na+/H+交換機構蛋白の発現と活性を検討する。ラット摘出灌流心モデルにおいて再灌流中にcarbonic anhydraseが関与する反応(CO2+H2O→HCO3-+H+)においてcarbonic anhydrase活性とNa+/H+交換機構活性の関連性を分子生物学的に検討する。 次年度使用額が生じた状況:研究の進展が遅延しており、必要物品の購入が次年度になったため。
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次年度の研究費の使用計画 |
分子生物学的検討の準備に研究費を使用する。 安定して機器が使用できるかどうか検討すること。そしてラット摘出灌流心モデルで再灌流中にcarbonic anhydraseが関与する反応(CO2+H2O→HCO3-+H+)においてcarbonic anhydrase活性とNa+/H+交換機構活性の関連性を明らかにするための準備実験を行う。
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