研究課題/領域番号 |
23592024
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研究機関 | 秋田大学 |
研究代表者 |
石橋 和幸 秋田大学, 医学部, 講師 (00291617)
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研究分担者 |
山本 文雄 秋田大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (00127474)
本川 真美加 秋田大学, 医学部, 助教 (70451648)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 人工血管 / ハイブリッド / 磁性体 / 電磁誘導 |
研究概要 |
本研究の目的は、これまでに開発してきたTissue engineering の技術に電磁誘導を用いた機械工学的手法を生体血管に加えることにより自己組織の細胞誘導を促進した、新しいハイブリッド型人工血管と血管新生技術の開発である。本年は新たな人工血管の作成を行った。「方法」(実験I)生体吸収性ポリ乳酸共重マルチブロック共重合体を基材とした、厚さ約30μmの薄膜を作成した。Aの薄膜は表面加工を施さず、Bの薄膜は水酸化ナトリウムを用いた表面親水化処理を施行した。それぞれ薄膜の接触角、引張強度を測定し、走査電子顕微鏡を用いて材料表面の評価を行った。(実験II)A、Bそれぞれの薄膜(3x3cm)をWister系ラット(n=12)の肝臓表面を擦過した部位に移植した。それぞれ移植後2週、4週時にsacrificeし組織学的に評価した。「結果」(実験I)Aの薄膜の接触角は69.3であったが、Bの薄膜は、薄膜に水が浸み込み、接触角は測定不能であった。引張強度は薄膜Aは21.0MPaで、薄膜Bは18.2MPaと有意差は認めなかった。走査電顕では、Aの薄膜表面はほぼ平滑であったが、Bの薄膜表面は多数のハニーカム状の孔を認め、表面は非常に粗な状態であった。(実験II)組織所見では、肝臓表面の薄膜内へ線維芽細胞が侵入し分解過程にあった。その表面は1層の線維芽細胞層ができており、周囲との癒着を防いでいた。Bの薄膜群においては、術後2週時には、癒着は認めず、薄膜はすでに吸収過程にあり、4週時には薄膜はほぼ吸収され、肝臓表面は数層の線維芽細胞の層で覆われていた。生体吸収性材料に表面加工処理を施行した新しい膜を開発した。生体吸収材料として、多孔質であり、かつ表面が粗であることが、組織表面との接着を良好とし、早期の細胞侵入が容易となることより、機能発現には有用であると考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、新たな人工血管の材料となるPLLA-PCAポリマーを原料としたフィルムの開発を行い、その特性の測定を行い、また生体内における吸収性について、ラットを用いて検討した。また、新たな特許の申請を行った。それらのポリマー表面を加水分解処理することにより、細胞接着性が変化することを明らかとしてきた。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、そのフィルム内にフェライトを封入したもの、しないものを作成し、そのシート上で細胞培養を行い、磁気の刺激を加えることによる、細胞の動的挙動を観察する。そのために、昨年度購入予定であった、磁気発生装置が必要となる。培養細胞は、内皮細胞、平滑筋細胞、線維芽細胞を使用する。その次の段階として、雑種成犬の総頸動脈に移植し、外部より磁気をかけることにより血管新生の程度を、組織学的に検討する。
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次年度の研究費の使用計画 |
新しいポリマー上において、細胞培養を行い、磁気をかける。本年度に購入予定でったが、特許の申請などがあり、まずは、ポリマーの生体特性を検討する実験を本年度に行ったため、磁気をかけるところまで進展しなかった。特許の申請も終わり、細胞培養実験へと移行できるようになったため、そのため、当初予算で、本年度購入予定であった磁気発生装置、磁気コイル、処理用コンピューターを次年度に購入予定である。
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