研究課題/領域番号 |
23592024
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研究機関 | 秋田大学 |
研究代表者 |
石橋 和幸 秋田大学, 医学部, 講師 (00291617)
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研究分担者 |
山本 文雄 秋田大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (00127474)
本川 真美加 秋田大学, 医学部, 助教 (70451648)
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キーワード | 生体吸収性材料 / 人工血管 |
研究概要 |
【対象と方法】(実験I)生体吸収性ポリ乳酸共重マルチブロック共重合体を基材とした、厚さ約30μmの薄膜フィルムを作成した。薄膜は水酸化ナトリウムを用いて表面をハニーカム状の親水化処理を施行した。Wister系ラット(n=6)の両側の腹膜を3-0絹糸で2点結紮し、作成した薄膜(2x2cm)で覆うように固定した。左側はコントロールとし、移植後1週、6週時にsacrificeした。(実験II)同様の素材を用い、厚さ50μmの親水化処理を施行した繊維性シートを作成した。ラット(n=8)の心膜を切除し作成した繊維性シート(2x2cm)で補填するように固定した群(A群)と、コントロール群(B群)に分け、移植後6週時にsacrificeし、同様に評価した。【結果】(実験I)移植1週時には、フィルムは腹壁にそのまま残存しており、絹糸および周囲組織とフィルムとの癒着は認めなかった。コントロール側においては、強い癒着を認めた。6週時において、フィルムは残存しており、1週と同様に、絹糸および周囲組織との癒着は認めなかったが、コントロール側においては、絹糸と周囲組織は、強固な癒着を認めた。組織学的に6週時においては、フィルム内への細胞侵入は認められなかった。(実験II)移植6週時には、シートは残存しており、心外膜と肺との癒着は認めなかった。しかし、シート内には線維芽細胞の侵入を認めており、シートの一部は生体内での分解過程にあった。コントロール群においては、Grade III/IVの癒着を認めた。【結語】親水化処理を施行した新しい生体吸収性人工心膜を開発した。繊維性シートは、水分の透過性も高く、フィルムと比較し、細胞侵入が容易となるような足場を形成しており、生分解性がより高いと考えられた。繊維性多孔質で親水化処理を行った生体吸収性シートは、人工心膜および人工血管として臨床応用への可能性が考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、昨年度に続き、材料の開発と、組織への吸収過程に重点を置いて研究した。 生体吸収性材料に関しては、特許を得た。また、シートは加水分解によるハニーカム構造より、電磁紡錘式による細繊維構造がより組織の侵入を容易にしていると考えられた。現在、大型動物(犬)を使用し、継続実験中である。
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今後の研究の推進方策 |
現在は、大型動物を用いて、材料の生体吸収過程を検討中である。また、フィルム上での細胞培養も行っており、本年は磁界をかけて、実験を継続していく予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
大型動物を用いて、頚動脈に新たな人工血管を移植すると同時に、新たな材料上で細胞培養を行い、磁界を掛けた状態での変化を観察予定である。材料ができるまでに時間を要したため、大型実験動物を昨年度は5頭のみ使用し実験を行った。そのため、繰越金が発生した。本年度はさらに実験を進めるため、昨年度の繰越金を使用し、大型動物実験を遂行予定である。磁力発生装置については、廉価のもので対応できたため、その分を動物実験に使用予定である。
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