研究課題/領域番号 |
23592028
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
木下 修 東京大学, 医学部附属病院, 助教 (40598512)
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研究分担者 |
小野 稔 東京大学, 医学部附属病院, 教授 (40270871)
本村 昇 東京大学, 医学部附属病院, 講師 (40332580)
斎籐 綾 東京大学, 医学部附属病院, 助教 (10431868)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 同種心臓弁・血管移植 / 石灰化 / リン酸バインダー |
研究概要 |
同種心臓弁・血管の移植後石灰化は、若年レシピエントでより早期に高頻度でみられることが臨床的に知られており、若年患者の生理的高リン血症がその一因との報告がある。臨床的に高リン血症が問題となる代表的疾患は慢性腎不全であり、透析患者の高リン血症に対して用いられるリン酸バインダーが同種心臓弁・血管の移植後石灰化を抑制するとの仮説を立て、これを検証することが本研究の目的である。 上記仮説を検証するために本研究ではラットを用いた動物実験を行うこととしている。同種血管移植後石灰化モデルとして、ラット同種異系大動脈・腹部皮下移植モデルを採用し、本年度はコントロール群の実験・研究手技を確実にすることに主眼をおいた。動物実験手技はBrown Norwayラットの大動脈を摘出し、Lewisラットの腹部皮下に移植し、犠牲死までの期間を2週間や4週間と複数設定した。犠牲死の際には腹部皮下の移植片を実体顕微鏡下に摘出し、一部は組織病理学的評価のためにホルマリン固定し、残りは石灰化の定量的評価のために凍結保存した。犠牲死の際には同時に血清を採取し、カルシウム代謝に関わる諸因子を測定した。ホルマリン固定した移植片はHE染色、EVG染色、von-Kossa染色を行い、石灰化も含めて組織病理学的に評価した。凍結保存した組織片は硝酸と過酸化水素水の混合液に溶解し、石灰化の主たる成分であるカルシウムの含有量を原子吸光度分析法で測定して石灰化の定量的評価とした。以上のコントロール群手術を積み重ね、同種大動脈の安定した移植後石灰化を得られるようになっている。 また本年度は、「若年者の生理的高リン血症が同種大動脈移植後石灰化の一因である」ことをラットにおける動物実験で示した我々の先行研究を論文化して投稿した。同種心臓弁・血管移植の臨床例についても検討を続け、本研究の参考にしている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究は、同種大動脈移植後石灰化に対するリン酸バインダーの有効性を検証することが目的であり、コントロールに対する比較対象群としてリン酸バインダー投与群の実験を行わなければならないが、本年度はコントロール群の実験手技の安定化、研究プロトコルの確立に主眼をおき、比較対象群の検討が進まなかったため、達成度は「やや遅れている」とした。 ただし、既に比較対象群の実験を開始しており、動物実験手技や研究プロトコルはほぼ確立したため、今後は比較対象群の実験も順調に遂行して研究が進む見込みである。
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今後の研究の推進方策 |
本研究においては同種大動脈移植後石灰化に対するリン酸バインダーの有効性を検証するが、コントロールの比較対象として検証するリン酸バインダー投与群では、リン酸バインダーとして炭酸ランタンまたは炭酸カルシウムを投与することとした。既に種々の割合で飼料に炭酸ランタンあるいは炭酸カルシウムを混合したラット用飼料の作成を開始して比較対象群の実験を開始している。本年度、コントロール群における手術手技および研究のプロトコルがある程度定まったため、今後は比較対象群の実験をこのまま順調に進めていく。
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次年度の研究費の使用計画 |
上記に示した如く、次年度には比較対象群を中心に多くの動物実験を要する。また、動物実験で得られた試料・検体に関しても、種々の検体検査が必要であり、これらに対してラット購入費用や薬剤(リン酸バインダーなど)購入費用、検体検査費用(病理組織標本作成費用など)に研究費を要する。 特に今年度は比較対象群の動物実験があまり十分に進められず、その分次年度に動物実験を数多く行う必要があるため、今年度研究費予算額の残額もすべて次年度に使用見込みである。
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