研究課題/領域番号 |
23592028
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
木下 修 東京大学, 医学部附属病院, 助教 (40598512)
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研究分担者 |
小野 稔 東京大学, 医学部附属病院, 教授 (40270871)
本村 昇 東京大学, 医学部附属病院, 講師 (40332580)
斎籐 綾 東京大学, 医学部附属病院, 講師 (10431868)
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キーワード | 同種心臓弁・血管移植 / 石灰化 / リン酸バインダー |
研究概要 |
同種心臓弁・血管の移植後石灰化は、若年レシピエントでより早期に高頻度でみられることが臨床的に知られており、若年患者の生理的高リン血症がその一因との報告がある。臨床的に高リン血症が問題となる代表的疾患は慢性腎不全であり、透析患者の高リン血症 に対して用いられるリン酸バインダーが同種心臓弁・血管の移植後石灰化を抑制するとの仮説を立て、これを検証することが本研究の目的である。 上記仮説を検証するために本研究ではラットを用いた動物実験を行い、同種血管移植後石灰化モデルとして、ラット同種異系大動脈・腹部皮下移植モデルを採用した。Brown Norwayラットの大動脈を摘出し、Lewisラットの腹部皮下に移植して、設定した期間後に犠牲死として移植片を摘出し、組織病理学的検査と組織中のカルシウム含有量検査により石灰化の程度を評価している。また、犠牲死の際には同時に血清を採取し、カルシウム代謝に関わる諸因子を測定している。 平成23年度はコントロール群の実験・研究手技の確立に主眼をおき、安定した移植片の石灰化が得られるようになった。平成24年度は検討対照群の動物実験を進めた。リン酸バインダーとして炭酸カルシウムおよび炭酸ランタンを用いた。リン酸バインダーを飼料に混じる割合を複数設定し、犠牲死までの期間も複数設定して検討した。その結果、現在までのところ、飼料に重量百分率で3%のリン酸バインダーを混じた場合に、移植した同種大動脈組織中の石灰化が有意に抑制される結果が得られている。 また本年度は、「若年者の生理的高リン血症が同種大動脈移植後石灰化の一因である」ことをラットにおける動物実験で示した我々の先行研究がThe Journal of Thoracic and Cardiovascular Surgeryに掲載された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成23年度はコントロール群の実験手技の安定化、研究プロトコルの確立に主眼をおき、検討対象群の検討が進まなかったため、達成度は「やや遅れている」としたが、平成24年度は検討対象群の実験が順調に進み、また、我々の立てた仮説を裏付けるデータが得られつつあり、「おおむね順調に進展している」と考える。
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今後の研究の推進方策 |
平成24年度に検討対象群の実験が順調に進み、我々の立てた仮説を裏付けるデータが得られつつあるため、より明らかに仮説を実証できるようさらに実験を重ねて個体数を増やしつつ、データの検証・まとめを行う方針である。基本的な方針に変更はない。
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次年度の研究費の使用計画 |
さらなる動物実験のための費用や、得られた試料の評価に関わる検査費用を要する。また、平成25年度は研究の最終年度であり、得られたデータをまとめて統計解析を行い、論文作成する際の英文校正費用や、研究成果を発表するための出張旅費が必要であり、これらに研究費を用いる予定である。
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