研究課題
同種心臓弁・血管の移植後石灰化は、若年レシピエントでより早期かつ高頻度にみられ、我々は先行研究で若年者の生理的高リン血症が同種大動脈移植後石灰化の一因であることを報告した。一方、臨床的に高リン血症が問題となる代表的疾患は慢性腎不全で、透析患者の高リン血症に用いられるリン酸バインダーが同種心臓弁・血管の移植後石灰化を抑制するとの仮説を立て、これを検証することが本研究の目的である。ラット同種異系大動脈・腹部皮下移植モデルで動物実験を行った。リン酸バインダーは炭酸カルシウム(CC)と炭酸ランタン(LC)を用いた。通常飼料(ND)にCCあるいはLCを混じる割合を複数設定した飼料を作成して与え、犠牲死までの期間も複数設定して平成23年度から平成24年度にかけて予備実験を行い、リン酸バインダー含有割合と犠牲死までの期間を検討後、以下の結果を得た。【方法】4週齢BNの大動脈を摘出し、4週齢LEWの腹部皮下に移植し、移植後に与える飼料を通常の飼料(ND群)、LCを3%含有する飼料(LC群)、CCを3%含有する飼料(CC群)の3群に分けて各群9匹とし、移植後2週間で犠牲死とした。移植片の石灰化をvon-Kossa染色で病理組織学的に定性的に評価し、石灰化の程度を0から3の4段階の石灰化スコアに変換した。また、移植片組織を溶解して原子吸光分析法によってカルシウム含有量を調べ定量的に評価した。血清カルシウム濃度を測定した。【結果】石灰化スコアとカルシウム含有量はND群とLC群、ND群とCC群の間に有意差を認め、定性的にも定量的にもリン酸バインダー投与群で石灰化は有意に抑制されたと考えられた。血清カルシウム濃度はCC群でND群やLC群より統計学的有意に高値であった。【結論】ラット動物実験で、リン酸バインダーはCC、LCともに同種大動脈移植後石灰化を抑制した。CCでは高カルシウム血症がみられた。
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日本臨床
巻: 別冊感染症症候群(下) ページ: 65-68