研究課題/領域番号 |
23592032
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研究機関 | 山梨大学 |
研究代表者 |
榊原 賢士 山梨大学, 医学部附属病院, 助教 (40419338)
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研究分担者 |
松本 雅彦 山梨大学, 医学工学総合研究部, 教授 (30372501)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 内膜肥厚 / mTOR |
研究概要 |
最近silorimus(rapamycin)が薬物溶出性ステントに使用されており、冠動脈へステント留置後、再狭窄抑制作用が有効であることが示されている。rapamycinはmTOR(mammalian Target Of Rapamycin)を抑制し細胞増殖、遊走の抑制、アポトーシスを促進し冠動脈内の内膜肥厚を抑制する。このことにより冠動脈ステントの開存率が改善されてきた。しかし、下肢のバイパスや冠動脈バイパス手術においてグラフト閉塞の原因となる内膜肥厚に対し、抗凝固剤投与等行われてきたが効果が少なく、現在まで内膜肥厚の抑制法は確立されていない。今回、われわれは、silorimus(rapamycin)のターゲットであるmTORに注目し、グラフト吻合部でこの活性を抑制することにより内膜肥厚を抑えることを目標とした。われわれは以前よりsiRNA mTORのtransfectionの条件を検討し実際にその条件で大伏在静脈の平滑筋細胞に導入すると、観察細胞数が著しく低下することを確認している。ラパマイシンによりmTORの活性を抑制することにより細胞のアポトーシスを誘導することからsi RNAによりmTORの活性化が抑制され培養細胞が減少したと考えている。今年度は次のステップとして吻合部で内膜肥厚を起こす部位は大伏在静脈だけでなく、宿主の動脈に対しても起こりうるため、前述のsiRNAが大動脈由来の平滑筋細胞へtransfectionを行ってきた。現在までのところさまざま条件を行いtransfectionの効率をあげるため検討を行っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
現在、正常ヒト大動脈平滑筋細胞にコントロールsiRNA (GFP)をtransfectionし効率のよい条件を検討している。実際に大伏在静脈の平滑筋細胞に導入する条件と同じ条件では十分な効率結果が得ることができない。そのため、様々な条件を作成し検討している。この条件設定が今後の結果に大きく影響するため、慎重に行っているためである。
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今後の研究の推進方策 |
次年度予定しては、1.大動脈瘤病変の免疫染色:手術時の検体で大動脈瘤壁と健常部の動脈壁を採取し免疫染色を行い実際にmTORの発現を調査する。2.ヒト正常大動脈壁の平滑筋細胞へsiRNA mTORのtransfectionの確立:われわれは、すでに大伏在静脈においてmTORのsiRNAの使用した経験がある。しかし、ヒト大動脈由来の平滑筋細胞に使用した場合は有効な結果が得られていないため、まず条件の設定を確立する。平滑筋細胞を培養し、アテロコラーゲン法を用いてコントロールsiRNA (GFP:緑色蛍光タンパク質が発現する)を導入する。導入効率良好であれば、siRNA mTORを使用し、導入した細胞のmTORのタンパク質、RNAの生成の抑制を評価する。評価の方法としてタンパク質-Western blot法, RNA-Real time-PCRを使用しmTORの抑制を確認する。また、免疫染色でのmTORのタンパクの発現量も検討する予定である。次に、siRNA mTORを導入した細胞とコントロールの細胞の生理学的評価を行う。細胞遊走-modified boyden chamberを使用し膜を貫通し遊走した細胞を計測する予定。細胞増殖-コントロール群とsiRNA mTOR群での増殖の差を培養1日目、3日目、7日目で計測する。また、細胞増殖ELISA,BrdU発色キット(Roche)を使用する。(細胞分裂期にBrdUが細胞内に吸収されることを利用して増殖が測定できる。)アポトーシス-Cell Death detection ELISA(Roche)。(アポトーシスが起こるとDNAが切断される性質を利用して測定できる。)
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次年度の研究費の使用計画 |
今後の研究費の方針について主にIn vitroでの実験を予定している。細胞培養関連(シャーレ、培養液、ウシ胎児血清)、siRNA mTOR(cell signaling社) 増殖因子(PDGFなど)、ヒト大動脈正常細胞(平滑筋細胞)、Transfection用のアテロコラーゲンへの使用を予定している。免疫染色を始める予定であり条件設定のため数種類の抗体の購入も予定している。当科では、すでに肺癌細胞に対しsiRNA mTORを使用していたこともあり23年度は流用することができ今回前年度の繰越金があり合わせて、細胞培養関連に使用予定である。
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