研究課題
急性心筋梗塞に合併する心室中隔穿孔に対しては、穿孔を来した心室中隔を手術で再建することが唯一の治療法であるが、急性心筋梗塞にともなう脆弱な心筋組織を手術するため手術成績は不良である。本研究では、心室中隔穿孔をカテーテル治療により治療するために、左心室内に留置可能なステントグラフトの開発を進めた。左心室内ステントは複雑な左室内腔にフィットし、なおかつ心収縮を妨げず、催不整脈性を有しない必要があるため、金属糸を編み込んだネット状ステントグラフトを作成した。初期モデルとして、左室心尖部から挿入し、固定する円錐状のステントグラフトを作成し、ブタ心への挿入および固定性を評価した。左心室中隔側は平坦でステントグラフトの圧着に適しているが、自由壁半周には乳頭筋組織があり、ステントグラフト留置が困難な構造である事が判明し、ステントグラフトのデザインを変更した。改良型は左右非対称のステントグラフトとし、グラフト装着部位は中隔側のみに留め、自由壁側は心尖部のみを被覆するものとした。しかし、改良型では中隔側、特に中隔心基部側の圧着力が弱いことが判明したため、中隔心基部側の圧着性を向上させることが課題であり、金属糸ステントのみを自由壁側に配置し、自由壁側を支えとして中隔側の圧着性を高めるデザイン変更を進めている。作成したステントグラフトを左室内留置する方法は次の開発点である。心尖部からの直接挿入のためのdelivery sheath を作成し、peal off しながらdeploy する挿入方法を開発した。ステントグラフトは心尖部に固定することにより、左右非対称モデルの固定する方向性を保つことと、心尖部への圧着性を保つデザインとしている。3年間の研究期間内に臨床使用可能な試作品の完成をめざしたが、左室心機能を障害しないステントグラフトのデザイン決定は困難であり、現在は大動物実験用の試作品の完成に留まっている。