研究課題/領域番号 |
23592046
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研究機関 | 奈良県立医科大学 |
研究代表者 |
吉川 義朗 奈良県立医科大学, 医学部, 講師 (40343420)
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キーワード | 心保存 / 虚血再灌流障害 / カルパイン阻害剤 |
研究概要 |
我々は、新しい可溶性カルパイン阻害剤であるSNJ-1945を用いた心筋保護液の虚血再灌流障害の軽減効果について実証してきた。 実臨床において、SNJ-1945の有用性、効能・効果を拡大するため、心保存後の虚血再灌流障害においても、SNJ-1945が不全心形成の予防効果を有するかを検討するためラット心を用いて実験を行った。現在のところ基礎実験であるU-W solution(University of Wisconsin solution)で保存した摘出心を血液により再灌流させたが再拍動を得られず、基礎実験の時点でデータ採取ができていない。 そのため、コンダクタンス・カテーテルを使用し、心臓のmild local ischemia (LAD領域)後の心機能を評価することにより、生体でのSNJ-1945の効果を検討した。 虚血30分前にラットの腹腔内にSNJ-1945を投与した群とコントロール群とで比較検討した。 結果、コントロール群では、midrange LV volume (mLVV)での、収縮末期圧(ESP(mLVV)), 収縮期圧容積面積(PVA(mLVV)(1心拍あたりの総機械的仕事量,酸素消費量に正相関する)が低下した。しかしSNJ-1945はこれらの低下を軽減し、α-fodrinの分解を抑制した。このことは、生体においてもSNJ-1945の虚血再灌流障害を予防する効果を実証したことになる。 この実験結果により、SNJ-1945の臨床応用への期待が高まったと考えている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
実臨床で心移植が緊急手術とならず、予定手術となるための心保存の実験である。その為、より長時間での心保存の有用性を確かめたかったが、最初に想定した24時間での心保存時間が長く、コントロールの実験に成功していない。 心保存期間24時間という長時間を想定したのが問題であるが、長時間であることが有意義な実験であるので何とか計画通りのプロトコールを続けた。 しかし、実験結果として計画が遅れているのが事実である。
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今後の研究の推進方策 |
University of Wisconsin(UW)液を用い、24時間の単純冷却による保存液浸漬したラット保存心を、下記の血液交差灌流実験系を用いエネルギー学的・力学的に心機能評価する。 最初に、UW液24時間の単純冷却による保存液浸漬したラット保存心で左室容量を変化させて(Vol-run)、心停止前の左室収縮期末圧容積関係(ESPVR)、一心拍当たりの心筋酸素消費量(VO2)-収縮期圧容積面積(PVA)関係を求める。次に1%塩化カルシウム溶液を冠状動脈注 入することにより、心筋の収縮性を変化させることにより、収縮性の酸素コストを求る。現在までの我々の実験により正常心でのESPVR, VO2-PVA関係との関係を検討する。 次にUW液に水溶性カルパイン阻害剤添加し、同様に24時間の単純冷却による保存液浸漬を行った保存心で同様の評価を行う。評価項目は、心拍再開率、心拍再開までの時間、中間左室容量での左室圧(ESPmLVV)、中間左室容量での収縮期圧容積面積PVAmLVV、VO2-PVA関係直線におけるslopeとVO2-intercept(主として細胞内Ca2+ハンドリングについて消費するVO2)、収縮性の酸素コストについて検討する。 以上を正常心、UW液保存心、水溶性カルパイン阻害剤添加UW液保存心の3群間での比較を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
ラット摘出心における血液交差潅流の実験系は確立しているが、酸素消費量測定のためのoximeterのセル、電磁流量計のプローベなど高額な消耗品購入、および生理学的実験終了後の免疫染色などの固定・染色薬液の購入などに使用する予定である。
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