我々はcalpain inhibitorであるSNJ-1945を用いて心虚血再灌流障害を軽減することにより、心保存に対しても有用性を有すると考えた。昨年は生体内での心の虚血再灌流障害予防効果を見るため、コンダクタンス・カテーテルを用いて、心臓の左冠状動脈前下行枝領域のmild local ischemiaに対するSNJ-1945の予防効果を検討した。 コントロール群に比較し、midrange LV volume (mLVV)における、収縮末期圧(ESP(mLVV))、収縮期圧容積面積(PVA(mLVV))の虚血再灌流後の低下を抑制し、心機能を虚血再灌流後も良好に維持できた。また、細胞骨格タンパクであるα-fodrinの分解も抑止した。 最終年度には更に、全心臓での心保存後の虚血再灌流障害の予防効果を検証する予定であったが、私的都合により頓挫することになった。 しかし、今までのSNJ-1945の心虚血再灌流障害に対する予防効果は、既存のcalpain inhibitor 1と同様に有効であることが実験的に立証できたと考えている。また水溶性のSNJ-1945はcalpain inhibitor 1の臨床応用への大きな障壁であった脂溶性であるという部分を改良し、臨床応用に最も近いカルパイン阻害薬であることを立証できたと考えている。
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