研究概要 |
目的:抗凝固剤warfarin(WF)と消化管治療薬proton pump inhibitors (PPI) の併用は,薬剤代謝酵素CYP2C19を共有して代謝されるため,相互作用によりプロトロンビン時間国際標準価値(INR) が異常高値となりうる.この回避ためCYP2C19 遺伝子系を評価し,オーダーメイド処方の可能性について検討した. 方法:開心術後112例につき純粋にCYP2C19遺伝子系の影響を評価するため,CYP2C9とVKROC1の遺伝子系を統一した82例を対象として2群に分類,I群 (41例) はPPIとしてlansoprazol 15mg/日, II群 (41例) はrabeprazole 10mg/日を投与した. 結果:2か月間の最大INR値はI群 3.36±0.98,II群 2.29±0.55とI群で有意に高値, over-INR (>3.5)はI 群15例, II 群2 例に認め,I群で有意に高率. 出血合併症は10例(前回は12例としたが最終検討により2例は除外された),全例I群の症例(P=0.015). 合併症出現時の平均INRは4.51と異常高値であった.Logistic回帰分析の結果,over-INR (OR 3.58, 95%CI: 3.48-368.25, P<0.0001)およびlansoprazole とCYP2C19 intermediate metabolizer のペア(OR 2.39, 95%CI: 1.108-29.491, P=0.0009) が出血合併症の独立危険因子と判定された. 結論: CYP2C19遺伝子系が intermediate metabolizerの場合,WFとlansoprazoleの併用は出血合併症のリスクを高める可能性があり,オーダーメイド処方としてrabeprazole を選択する必要がある.
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