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2011 年度 実施状況報告書

肺高血圧症治療ターゲットとしての抗酸化ストレス転写因子Nrf2の役割の解明

研究課題

研究課題/領域番号 23592052
研究機関東北大学

研究代表者

星川 康  東北大学, 加齢医学研究所, 助教 (90333814)

研究分担者 近藤 丘  東北大学, 加齢医学研究所, 教授 (10195901)
福本 義弘  東北大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (70363372)
野田 雅史  東北大学, 大学病院, 助教 (70400356)
岡田 克典  東北大学, 加齢医学研究所, 准教授 (90323104)
研究期間 (年度) 2011-04-28 – 2014-03-31
キーワード低酸素 / 肺高血圧 / 右心室肥大 / 肺血管リモデリング / 酸化ストレス / Nrf2 / 活性化剤 / 遺伝子改変マウス
研究概要

先行研究で、抗酸化ストレス転写因子Nuclear factor E2 p45-related factor 2 (以下Nrf2) 活性化剤のoltipraz投与が、野生型マウスの長期低酸素曝露による右心室肥大と肺胞管レベルの肺細動脈筋性化を抑制することを明らかにしていたが、より太い細気管支レベルの肺動脈壁肥厚も抑制することを明らかにした。Nrf2欠損マウスの低酸素による肺血管リモデリングは野生型マウスと同程度であったが、右心室肥大はより重症であった。Nrf2欠損マウスに対するoltipraz投与は低酸素による心肺病変を抑制せず、野生型マウスにおけるoltiprazの効果は、Nrf2依存性であることが示された。野生型マウス肺では低酸素曝露により酸化ストレス蓄積が招来されることが報告されており、Nrf2が活性化されていることが予想されたが、予想に反し、低酸素曝露マウス肺ではNrf2標的遺伝子NAD(P)H quinone oxidoreductase 1 (NQO1)とglutamate-cysteine ligase catalytic subunit (GCLC)発現が低下していた。特発性肺動脈性肺高血圧症 (IPAH) 患者肺におけるNQO1とGCLC遺伝子発現は、対照肺(肺癌患者の非腫瘍部)に比し有意に高値で、免疫組織染色では、肥厚肺動脈の血管内皮や特徴的な肺動脈閉塞性叢状病変内のスリット状の血管を内張りする細胞層にNQO1とGCLCの強いシグナルを認めた(この局在は、先行研究におけるosteopontin、他科からの酸化ストレスマーカーの指標:8-hydroxydeoxyguanosineとほぼ同一であった)。低酸素曝露マウス肺とIPAH患者肺ではNrf2標的遺伝子発現が全くことなる方向性を有していることが示唆された。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

IPAH患者肺における検討は研究目的の想定通りの結果が得られている。Nrf2欠損マウスと野生型マウスの長期低酸素曝露による右心室肥大、肺血管リモデリングの重症度比較は、想定と異なり肺血管リモデリングに差異を見いだせなかったが、右心室肥大に関してはNrf2欠損マウスでより重症であることを確認できた。Nrf2欠損マウスの長期低酸素曝露による右心室肥大、肺血管リモデリングに対するoltiprazの効果も検討でき、野生型マウスにおけるoltiprazの効果がNrf2依存性であることを示し得た。Keap1f/fマウスの繁殖に難渋しており、想定通りの結果が得られそうではあるもののnが不足している。マウス低酸素性肺血管攣縮に対するoltiprazの効果の検討は、準備が進行中である。以上より研究計画はおおむね順調に進展している。

今後の研究の推進方策

Nrf2が恒常的に活性化されたKeap1 (Kelch-like ECH associating protein 1, Nrf2の抑制因子)の条件付き欠損 (Keap1f/f) マウスの繁殖に難渋し、このマウスを用いた実験課題のデータ集積が遅れている。対応策として、Keap1f/fマウスを一旦野生型マウスとバッククロスすることを計画中である。Keap1f/fマウスを用いて、Nrf2の遺伝子操作による活性化が長期低酸素曝露による心肺病変に及ぼす影響について検討する。Oltiprz投与が、マウス肺組織におけるNrf2活性化を惹起することを証明するために、野生型マウス、Nrf2欠損マウス、Keap1f/fマウスにoltiprazを投与し、肺組織核分画へのNrf2蛋白集積をWestern blot analysisで、肺組織Nrf2標的遺伝子NQO1、GCLC発現を定量RT-PCRで検討する。低酸素曝露が肺血管内皮細胞における酸化ストレス蓄積やNrf2標的遺伝子発現に及ぼす影響を評価する目的でFACSを用いてCD31陽性細胞を単離して検討する。IPAH患者肺と低酸素曝露マウス肺ではNrf2標的遺伝子の変化が全く逆方向でであったため、よりマウスモデルに近い病態を呈する慢性呼吸器疾患(慢性閉塞性肺疾患や特発性肺線維症)に合併する肺高血圧症を有する患者肺におけるNrf2標的遺伝子発現について検討する。

次年度の研究費の使用計画

野生型マウス購入、Western blot analysis用試薬、定量RT-PCR試薬、免疫組織用試薬に加え、研究に関する討議および成果発表を目的とした旅費に研究費を使用したい。加えて投稿論文の英文校正にも研究費の使用を計画している。

  • 研究成果

    (3件)

すべて その他

すべて 学会発表 (3件)

  • [学会発表] 肺高血圧病態における抗酸化ストレス転写因子Nrf2の役割の検討

    • 著者名/発表者名
      江場俊介 星川康 光石陽一郎 渡邊龍秋 川村昌輝 石橋直也 渡辺有為 野津田泰嗣 鈴木隆哉 大石久 前田寿美子 野田雅史 佐渡哲 桜田晃 遠藤千顕 岡田克典 山本雅之 近藤丘
    • 学会等名
      White Conference 2012
    • 発表場所
      軽井沢
    • 年月日
      2012年1月21日
  • [学会発表] Nrf2活性化剤oltiprazの長期低酸素曝露による心肺病変抑制効果

    • 著者名/発表者名
      江場俊介 星川康 光石陽一郎 渡邊龍秋 川村昌輝 石橋直也 渡辺有為 野津田泰嗣 鈴木隆哉 大石久 前田寿美子 野田雅史 佐渡哲 桜田晃 遠藤千顕 岡田克典 近藤丘
    • 学会等名
      iPUC (integrated Pulmonary Circulation Research)-II
    • 発表場所
      東京
    • 年月日
      2011年6月25日
  • [学会発表] An Nrf2 Activator, Oltipraz Attenuates Chronic Hypoxia-induced Cardiopulmonary Alterations in Mice

    • 著者名/発表者名
      S Eba, Y Hoshikawa, Y Mitsuishi, H Sato, T Watanabe, Y Watanabe, S Maeda, Y Okada, T Kondo
    • 学会等名
      American Thoracic Society International Conference 2012
    • 発表場所
      Denver, Colorado, USA
    • 年月日
      2011年5月11日

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公開日: 2013-07-10  

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