研究課題/領域番号 |
23592052
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
星川 康 東北大学, 加齢医学研究所, 助教 (90333814)
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研究分担者 |
近藤 丘 東北大学, 加齢医学研究所, 教授 (10195901)
福本 義弘 東北大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (70363372)
野田 雅史 東北大学, 大学病院, 講師 (70400356)
岡田 克典 東北大学, 加齢医学研究所, 准教授 (90323104)
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キーワード | 低酸素 / 肺高血圧 / 右心室肥大 / 肺血管リモデリング / 酸化ストレス / Nrf2 / 遺伝子改変マウス / CD31陽性 |
研究概要 |
抗酸化ストレス転写因子Nuclear factor E2 p45-related factor 2 (以下Nrf2)が恒常的に活性化されたKeap1 (Kelch-like ECH associating protein 1, Nrf2の抑制因子)の条件付き欠損 (Keap1f/f) マウスの繁殖に成功した。Nrf2の遺伝子操作による活性化が長期低酸素曝露による心肺病変に及ぼす効果は、oltipraz投与によるNrf2活性化と同様、右心室肥大、肺胞管レベルの肺細動脈筋性化、より太い細気管支レベルの肺動脈壁肥厚の抑制であることを明らかにした。Oltipraz投与により野生型 (WT) マウス肺核分画におけるNrf2蛋白量が増加すること、Nrf2欠損マウスでは同様の現象が見られないこと、Keap1f/fマウスではoltipraz投与なしで、肺核分画へのNrf2蛋白集積が見られること、oltipraz投与によりその増強はみられないことを確認した。さらに、oltiprazは容量依存性にWTマウス肺組織中のNrf2標的遺伝子NQO1とGCLC発現を増強させた。WTマウス肺からFACSを用いて単離したCD31陽性(血管内皮細胞)分画の活性酸素種 (ROS) 蓄積は、低酸素曝露により高値となった。にもかかわらず、Nrf2標的遺伝子GCLCとHO-1発現は低酸素曝露により低値となった。ヒト対照肺においては肺血管壁で比較的強い発現を認めたNQO1とGCLCは、肺高血圧合併慢性閉塞性肺疾患 (COPD) 患者における肺血管では微弱なシグナルしか認めなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
マウスの低酸素性肺高血圧におけるNrf2の役割に関する検討、二次性肺高血圧患者肺におけるNrf2標的遺伝子発現に関する検討は順調に進み、平成23および24年度の研究成果をAm J Respir Cell Mol Biol.誌に投稿し受理された。 Nrf2欠損マウス、Keap1f/fマウス、野生型マウスのモノクロタリン肺高血圧の重症度の比較実験は、冬期という環境の影響か、Nrf2欠損マウス、Keap1f/fマウスの繁殖に難渋している。気候がよくなるにつれ、繁殖効率の改善がみられるため、今年度中の研究完遂が可能な見通しである。
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今後の研究の推進方策 |
Nrf2欠損マウス、Keap1f/fマウス、野生型マウスのモノクロタリン肺高血圧の重症度の比較:長期低酸素曝露とは異なる機序により肺高血圧が進展すると考えられているモノクロタリン(ビンカアルカロイド)モデル(低酸素曝露に比し肺組織の炎症所見が非常に強い)における肺高血圧、右心室肥大、肺血管リモデリングの程度を、Nrf2-/-マウス、Keap1f/fマウス、野生型マウスで比較検討する。 長期低酸素曝露ラットにおける肺OPN発現亢進および肺高血圧に対するNrf2活性化の効果の検討:長期低酸素曝露によりラットではマウスに比しより程度の強い肺血管リモデリング(肺血管壁肥厚)を伴う肺高血圧、右心室肥大が招来される。これはラット肺において、低酸素曝露によって非常に強いOPN発現亢進が惹起されることが1つの原因であろうと推測している(Hoshikawa Y, Physiol Genomics. Physiol Genomics. 2003; 松田安史、星川 康、臨床呼吸生理. 2005)。低酸素曝露による肺OPN発現亢進および著明な肺血管リモデリングを伴う肺高血圧に対するNrf2活性化剤oltiprazの効果を検討する。
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次年度の研究費の使用計画 |
該当なし。
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