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2011 年度 実施状況報告書

仮想肺組織量を指標とした、肺切除後のリモデリング"代償性肺成長"の検証

研究課題

研究課題/領域番号 23592054
研究機関千葉大学

研究代表者

溝渕 輝明  千葉大学, 医学部附属病院, 助教 (50569861)

研究分担者 吉野 一郎  千葉大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (40281547)
吉田 成利  千葉大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (90334200)
坂入 祐一  千葉大学, 医学部附属病院, 医員 (30551949)
米谷 卓郎  千葉大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (00452764)
研究期間 (年度) 2011-04-28 – 2014-03-31
キーワード肺再生 / 肺癌 / 手術 / COPD
研究概要

基礎実験として、CTを用いた"仮想肺組織量"測定法の妥当性の検証を健常成人5人に対して行った。Spiro meterを併用し、深吸気位→中間位→深呼気位の3相で肺容積(ml)、平均肺密度(g/ml)を測定した。肺容積は吸気から呼気に移行するにつれて増加傾向を示し、逆に平均肺密度は低下傾向を示し、両者を掛け合わせることで算出した"仮想肺組織量"は、呼吸相に関わらず一定であった。CTの撮影条件に関わらず、CTを用いた"仮想肺組織量"測定法は妥当であると判断した。 全25例において、亜区域数を用いた予想式を用いて、呼吸機能、術側の肺容積と"仮想肺組織量"について、術後実測値と予測値との相違を検証した。FVCは113±11%、FEV1は110±13%であり、有意差は認めないものの、予測値より良い傾向を示した。術側肺容積は143±36%と、有意に改善し(p < 0.003)、術側"仮想肺組織量"は105±33%でほぼ予測値どおりであった。 COPD症例群(A群:4例)および非COPD症例群(B群:21例)に分けて同様の検討を行った。手術後平均3.4年で当検討を行った。術側肺容積の術後予測値に対する変化率(%)は、A群では117±9.3%であったのに対し、B群では147±37%であった。COPD群に比較し、非COPD群において、有意に良い容積の改善率を示した(p < 0.005)。術後"仮想肺組織量"の予測値に対する変化率(%)で示す。A群は74±3.3%であったのに対し、B群は、110±33% であった。COPD群は、非COPD群より有意に低い術後"仮想肺組織量"を示した(p < 0.00001)。肺切除後の代償過程において、COPD群では、肺組織量の低下を伴う肺容積の増大を示した。COPD群では、肺組織の再生・修復機能の低下を窺わせる肺の過膨張を示したと考えられた。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

肺切除後の再成長モデルとして、動物実験では片肺全摘がしばしば用いられている。片肺全摘後に残存肺が代償性再成長を示すことは、大型動物でも報告されている。このCLGは,片肺全摘後の残存肺過膨張を抑制することにより生じなくなることから、ストレッチなどの機械的刺激がトリガーになっていると考えられている。 実臨床では肺切除は、悪性腫瘍を持つ高齢者に行われる事が多いが、閉塞性換気障害など合併疾患の為に標準手術を躊躇する事は少なくない。しかし、術後の予測残存呼吸機能より予想外の機能回復を経験することも少なくない。このような場合、volume reduction効果等によるとされてきたが、CLGがヒトでも起こる可能性を否定はできないと考える。しかしながら、その検証は動物実験で行われているように残存肺を検体として用いることはヒトにおいて不可能であり、それを確認するための侵襲性の少ない肺再生の評価法が必要となる。その為の本研究の第1の目的は、CTを用いた"仮想肺組織量"の測定法の確立となったが、健常成人ボランティアにて行い、測定法の妥当性を実証することに成功した。 ついで、CTを用いた"仮想肺組織量"を用いて、COPDの有無が術側残存肺のCLGにどの様な影響をもたらすかを検証した。COPD群では術後肺容積は予測値より良いものの、"仮想肺組織量"はむしろ低下を示した。COPD患者における修復システムの劣化が推察され、肺切除後の修復機転において、CLGではなく過膨張を示すのではないかと示唆された。 以上の如く、基礎実験およびCTを用いた非侵襲的な仮想肺組織量の計測を成人に於いて行い、代償性肺成長の測定を開始することが出来、概ね研究は順調に経過していると考える。

今後の研究の推進方策

肺切除後の予測肺機能評価は、手術適応を決定する上で重要である。実臨床では、亜区域数法を使用している。本研究では術後平均3年以上を経て、手術の影響を受けなくなった時期に、呼吸機能検査およびCT volumetryを測定し、亜区域数法による予測肺機能の妥当性を明かにする。初回原発性肺癌の手術時の予測残存肺機能(亜区域数法)と術後実肺機能の比較を行う。肺葉切除のリモデリング"代償性肺成長"は、切除亜区域数に依存する可能性が高いと考える。従って次研究は、切除亜区域数で群を分けて検討する事とする。 A群:10亜区域以上の切除(右下葉、左上葉および下葉切除)とB群:10亜区域未満の切除(右上葉および中葉切除)の2群間の比較を行う。パイロットスタディーでは、肺切除後の肺機能は、切除肺容積に基づく勘案式(亜区域数法)よりも良好であり、この傾向は切除量が多い術式で強く認められた。この改善傾向が、肺切除後のリモデリング"CLG"によるものかを"仮想肺組織量"を用い、症例数を増やしつつ検証する。 CT画像比較検討の方法は、CT画像のDICOMデータをAZE社Virtual Place Raijin COPD病変解析ソフトを用い解析する。肺野および気管・気管支を抽出:肺野閾値-740HUによって肺野を、気管・気管支閾値-975HUにより気管・気管支内空気領域を抽出する。平均CT値の計測:肺野CT値ヒストグラムから平均肺CT値を計測する。肺容積の計測:抽出された肺容積をAZE社Virtual Place Raijin COPD病変解析ソフトを用い解析する。以上を用いて、肺切除後の肺機能は、切除肺容積に基づく勘案式(亜区域数法)よりも良好であり、この傾向は切除量が多い術式で強く認められた理由が、肺切除後のリモデリング"CLG"によるものかを"仮想肺組織量"を用い検証する。

次年度の研究費の使用計画

CLG"によるものかを"仮想肺組織量"を用い、症例数を増やしつつ検証する。症例の検討および画像解析は、以下の如く施行する。 CT画像比較検討の方法は、CT画像のDICOMデータをAZE社Virtual Place Raijin COPD病変解析ソフトを用い解析する。肺野および気管・気管支を抽出:肺野閾値-740HUによって肺野を、気管・気管支閾値-975HUにより気管・気管支内空気領域を抽出する。平均CT値の計測:肺野CT値ヒストグラムから平均肺CT値を計測する。肺容積の計測:抽出された肺容積をAZE社Virtual Place Raijin COPD病変解析ソフトを用い解析する。以上の検討の為に、研究費を使用し、解析結果を日本呼吸器外科学会、日本胸部外科学会、日本外科学会等日本の学会および海外の学会の学会に参加し、報告をする。また、同内容を英文論文化し、世界へ発信する。

  • 研究成果

    (2件)

すべて 2011

すべて 学会発表 (2件)

  • [学会発表] Compensatory Lung Growth Triggered by Major Lung Resection Determined by a Novel Method: Estimated Quantity of Pulmonary Tissue (EQPT)2011

    • 著者名/発表者名
      Mizobuchi T, Inage T, Morimoto J, Sakairi Y, Ishibashi F, Chiyo M, Kometani T, Iwata T, Moriya Y, Hoshino H, Yoshida S, and Yoshino I
    • 学会等名
      CHEST 2011
    • 発表場所
      ホノルル/ハワイ州(米国)
    • 年月日
      2011/10/18
  • [学会発表] COPD合併肺癌症例では、肺切除後のいわゆる代償性肺成長は認められない:"仮想肺組織量"を指標とした肺切除後のリモデリングの評価2011

    • 著者名/発表者名
      溝渕輝明、稲毛輝長、森本淳一、坂入祐一、石橋史博、千代雅子、米谷卓郎、岩田剛和、守屋康充、星野英久、吉田成利、吉野一郎
    • 学会等名
      第64回日本胸部外科学会定期学術集会
    • 発表場所
      名古屋国際会議場
    • 年月日
      2011/10/12

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公開日: 2013-07-10  

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