研究課題/領域番号 |
23592054
|
研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
溝渕 輝明 千葉大学, 医学部附属病院, 講師 (50569861)
|
研究分担者 |
吉野 一郎 千葉大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (40281547)
吉田 成利 千葉大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (90334200)
坂入 祐一 千葉大学, 医学部附属病院, 医員 (30551949)
米谷 卓郎 千葉大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (00452764)
|
キーワード | 肺再生 / 肺切除 / 代償性肺成長 / 肺癌 / 体性幹細胞 |
研究概要 |
一般的に再生しない臓器とされる肺は、再生医療研究の分野で、他臓器に比較し大幅に遅れている。しかし動物実験では再生に関する実験は進みつつあり、肺を切除した後の残存肺重量・容積・DNA量が肺損失を代償するように回復し、代償性肺成長(Compensatory lung growth:以下CLG)と称されている。ヒトにおいて、肺切除後の残存肺を切除して代償性肺成長を直接的に検証することができないため、我々はCT画像解析ソフトを用いた“仮想肺組織量:Estimated Lung Weight、以下ELW”測定法を新規に開発し、昨年度にその検証実験を行った。 昨年度に施行の肺癌肺切除後のCLGの検証をさらに推し進め、肺癌患者40名におけるCLGの検証を行った。切除亜区域数が10未満の肺葉切除後(N=20)のELWは予測値比で平均89.5±19.6%と低下を示したが、切除亜区域数10以上の肺葉切除後(N=20)のELWは予測値比が平均128±30.2%と有意差を持って予測値より良好であった(p<0.0001)。成人においてもある一定量以上の肺切除後には、動物実験と同様に代償性肺成長が生じている可能性があると考えられた。 Wistar ratより両側肺を摘出し、気管気管支洗浄後に消化酵素を用いて蛋白分解を行い、細かく分割し、フィルタリング、酵素処理を加えることでラットAT-II細胞を高い純度で分離した。左肺全摘後ラットに経気道的にAT-II細胞を注入するモデルを作成した。これらは先の全摘群の右残存肺と比較して、肺容量は同等でありながら、肺胞腔は小さいという結果であった。また、左肺全摘後にAT-II細胞を気道内注入した群では、肺胞壁間距離は全摘群と比べて有意に小さい結果であった。以上より、AT-II細胞を肺全摘後ラットの気道内注入することで、肺再生が促された可能性が示唆された。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度達成目標であった、ヒトにおける肺切除後のリモデリング“CLG”の検証に関して、昨年度に施行の肺癌肺切除後のCLGの検証をさらに推し進め、肺癌患者40名におけるCLGの検証を行うことができた。動物実験では、CLG発生のため一定量以上の肺切除後による物理的肺膨張刺激、血流の増加、増殖因子が必要であるとされていた。我々の研究では、上記3因子の影響が大きいと考えられる切除亜区域数10以上の肺葉切除後(N=20)と比較的小さな肺葉切除の切除亜区域数が10未満の肺葉切除後(N=20)の2群に分けて、CLGを検証し、大きな切除群のみにCLGと思われる現象を確認することができた。本年度達成目標のヒトにおける肺切除後のリモデリング“CLG”の検証は、順調に進展したと判断された。 さらに、動物実験も部分的に施行が可能であった。Wistar ratより体性幹細胞とされるラットAT-II細胞を高い純度で分離し、肺全摘後ラットの気道内注入することで、形態学的検証に肺胞構造の再生が促された可能性が示唆された。①AT-II細胞の分離と培養②AT-II細胞を用いた肺再生モデルの作成に着手できたと判断した。 以上より、「研究の目的」の達成度はおおむね順調に進展していると判断した。
|
今後の研究の推進方策 |
平成23年度24年度に施行した研究である①CTを用いた”仮想肺組織量”測定法の妥当性の検証②原発性肺癌の肺葉切除症例における、“仮想肺組織量”を用いた肺切除後のリモデリング“CLG”の検証を英語論文化し、平成25年4月2日に投稿した。今後Publishを目標とする。 平成25年度に施行の予定の③AT-II細胞気道内移入によるラット肺胞再生モデルにおけるCTを用いた“仮想肺組織量”を指標としたCLGの検証と病理学的な検証-臨床応用への可能性を探求の研究を推進する。Wistar rat(7-8週齢)より両側肺を摘出し、気管気管支洗浄後に消化酵素を用いて蛋白分解を行い、細かく分割し、フィルタリング、酵素処理を加えることで体性幹細胞とされるラットAT-II細胞を高い純度で分離し、左肺全摘後ラットに経気道的にAT-II細胞を注入するモデルを作成する。これらのAT-II細胞を気道内投与した肺再生ラットモデルに対し、CTを用いた“仮想肺組織量”の測定を行う。平成23年度、24年度で行ったヒトにおけるCTを用いた評価と同様に、この肺胞再生モデルにおいてCTを用いた“仮想肺組織量”を測定する。CTは動物実験用CTを用い撮影し、その撮影CTのdigital dataより“仮想肺組織量”を測定し、その指標としたCLGの検証と病理学的な検証を検討する。以上が、今後の研究の推進方策である。
|
次年度の研究費の使用計画 |
平成23年度24年度に施行した研究である①CTを用いた”仮想肺組織量”測定法の妥当性の検証②原発性肺癌の肺葉切除症例における、“仮想肺組織量”を用いた肺切除後のリモデリング“CLG”の検証を英語論文化し投稿中であるが、その論文化に研究費を使用する予定である。 今後施行予定のAT-II細胞を気道内投与した肺再生ラットモデルに対し、CTを用いた“仮想肺組織量”の測定を行うにあたり、動物実験に関する経費が必要であり、また専用の画像解析ソフトおよびワークステーションの購入が必要の予定である。 動物実験および当該臨床研究等を日本外科学会、呼吸器外科学会、胸部外科学会等および海外の学会に参加し報告をするとともに、同内容を英語論文化し海外に発信する。 平成24年度に未使用額が発生した状況について、理由は以下の二つとおりである。一つは、動物実験の実施が遅れており、平成25年度に動物実験関連の道具、試薬および消耗物品を購入の予定である。もう一つは、上記の記載のごとく、現在使用中のコンピューターワークステーションでは、動物CTの解析が不可能であり、新たに購入の必要がある。現在購入に向けて準備中であり、平成25年度に購入を行う。
|