研究課題/領域番号 |
23592056
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
板東 徹 京都大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (20293954)
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研究分担者 |
伊達 洋至 京都大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (60252962)
黄 政龍 公益財団法人田附興風会, その他部局等, 研究員 (10271511)
藤永 卓司 京都大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (00444456)
趙 向東 京都大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (00444464)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 外科 / 移植・再生医療 / トランスレーショナルリサーチ |
研究概要 |
Lewisラット(体重 300-400 g)を用いて、全身麻酔下に心室細動にて心停止を導入後、室温下に90分間放置し温虚血を与えた。90分の温虚血後に両肺ブロックを摘出し、ラット肺体外循環回路に接続し、60分間の低温持続灌流(6-10℃、2-3 ml/分)を行った(換気回数 40回/分)。灌流液にはK濃度を減量した改変型ET-K(Na+/K+=149/5 mEq/L)を用いた。この結果、改変型ET-Kでは、60分間の低温持続灌流中、対照群のSteen液群と同等の安定した換気抵抗、肺コンプライアンスを示し、肺血管抵抗ではより低値を認めた。しかしながら、肺重量は灌流時間とともに次第に増加し、肺水腫を来した。ET-K液では、含有成分の性状から特に低温時には粘稠度が高くなるため(粘稠度 LPD < ET-K < UW)、最近、臨床肺移植でも試みられている持続常温灌流の可能性を検討した。条件設定のため、Lewisラット肺体外循環回路にて従来型ET-Kを用いた常温持続灌流を行い、適切な灌流条件(10-11 ml/分)と換気条件(60回/分)を確定させた。Lewisラット(体重 300-400 g)を用いて、全身麻酔下に同様の処置を行い、90分間の温虚血を与えた後、ラット肺体外循環回路に接続し、60分間の常温持続灌流を行った。低K+改変型ET-Kで灌流された肺は、対照群のSteen液群に比べて、有意に肺血管抵抗が高く、肺重量の増加、肺水腫のため60分間の持続灌流を完遂できなかった。以上の結果より、単にK+濃度を下げるのみでは、ET-Kによる低温および常温持続灌流保存効果は不十分であり、さらに液組成の改良や新たな添加物の検討を要することが明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
電解質組成のみの改変では、十分な持続灌流保存効果が認められず、ET-K液のさらなる改良を要すると思われるから。
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今後の研究の推進方策 |
ET-K液の粘稠度が高いことが悪影響を及ぼしているならば、含有している膠質浸透圧物質HESを除いて、粘稠度を低下させることでの効果を検討する。また、血管拡張薬などの添加による保存効果の向上についても検討する。ラット肺で必ずしも十分でなかった保存効果であっても、イヌ肺では、異なる結果が得られる可能性があり、イヌ肺保存実験でも検討する。
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次年度の研究費の使用計画 |
研究の達成度がやや遅れているためイヌ肺実験を重点に実施していくため、動物購入費を厚くしていく予定。
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