研究概要 |
FOTとは,気道開口部から与えた様々な周波数の振動波に対して生ずる圧や気流速度から呼吸抵抗を測定する低侵襲で呼吸器系の合成抵抗を肺の中枢成分と末梢成分,更には気道成分と末梢肺組織成分とに分別可能である。我々はこの手法を用い,ラット移植肺におけるacute allograft rejection (AR) の病理学的進展と肺の機械的特性との関与を検討している。本年度は同所性ラット左片肺移植モデルを用いた.Sham-BN群(no operation, n=6),Isograft群(BN→BN, operation control, n=6),Allograft群(BN→LEW, AR group, n=17)の3群を用いた実験を施行、脱血死後開胸し,左片肺換気としてから各群において異なる4 つのPEEPレベル(0, 2, 4, 6 cmH20)でFOTを用い肺インピーダンス(ZL)を測定した。病理学的所見では,Isograft群は全てGrade 0であり,Allograft群はGrade 1(n=4), Grade 2(n=7), そしてGrade 3(n=6)の3群であった.ZLの解析結果では,気道成分よりも末梢肺組織成分において,拒絶早期から病理学的なGradeに伴い末梢肺組織抵抗が上昇する傾向を認めた. 急性拒絶反応は一般的に気道病変よりも先に末梢組織病変が出現する.我々の結果も末梢肺組織成分の変化が先行し,更に病理学的なGradeと共に変化することが考えられ,肺移植急性拒絶反応の検出や評価にFOTが有用である可能性が考えられた.引き続き病理学的Gradeと肺末梢組織の弾性抵抗との相関を検討する予定である。
|