研究課題/領域番号 |
23592062
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研究機関 | 徳島大学 |
研究代表者 |
先山 正二 徳島大学, ヘルスバイオサイエンス研究部, 准教授 (60291986)
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研究分担者 |
監崎 孝一郎 徳島大学, 大学病院, 講師 (70325265)
川上 行奎 徳島大学, 大学病院, 特任講師 (00596249)
滝沢 宏光 徳島大学, 大学病院, 講師 (90332816)
吉田 光輝 徳島大学, 大学病院, 講師 (30403710)
鳥羽 博明 徳島大学, ヘルスバイオサイエンス研究部, 助教 (40403745)
宇山 攻 徳島大学, 大学病院, 医員 (90437658)
梶浦 耕一郎 徳島大学, 大学病院, 助教 (60596253)
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キーワード | 肺の再生 / 胎生期肺組織 / 肺移植 / 肺気腫 / 豚 / ステロイド |
研究概要 |
肺の再生は、他の臓器と比較して研究は進んでいない。その理由は肺を構成する細胞の種類が他の臓器と比較して多いことと、ガス交換を行う場としての換気、拡散および血液循環といった肺胞レベルでのデリケートな構造にある。我々は肺胞レベルでの肺の再生・修復を目指している。我々が胎生期の肺組織に着目している理由は、胎性期肺組織のもつ次の特徴にある。すなわちi) 肺への分化の方向付けがなされている,ii)増殖能が旺盛である,iii)いわゆる“足場”となる間質組織が含まれている点である。これまで、豚での胎生期肺移植では、移植肺組織は成体肺内に生着はするものの、ラットやマウスのそれと比較して生着が良好とは言えない。その要因の一つが、サイクロスポリンによる免疫抑制を加えているが、allograftによる拒絶反応の影響があると言える。ただし、サイクロスポリンの投与量の増量による免疫抑制の強化だけで解決するとは考えていない。そこで、この問題を解決すべく周術期のステロイド投与について検討を行った。臨床において、早産は胎児のRespiratory distress syndrome (RDS)発症率が高まるが、母体へのGlucocorticoid投与でRDSのリスクを大幅に下げることができる。母体に投与されたステロイドにより胎児肺の分化が促進されるわけである。この事実に着目した。まず、ラットのモデルにおいて胎仔肺組織移植後2日間recipientにベタメタゾンを投与(0.2mg/kg, day0 & day1, i.m)した。その結果、生食を投与した群と比較してステロイドを投与した群において、胎生期肺組織の生着と分化を促進した。さらに、ステロイドの投与を移植後7日間にすると、2日間投与群と比較してさらに移植胎仔肺の分化が促進された。この結果を踏まえて豚の実験でもステロイド併用使用を計画している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
これまで我々が行ってきた、ラットやマウスで得られた知見を踏まえた豚での研究であるが、小動物の結果をそのまま大動物に挿入しがたい問題点がいくつか見つかった。この点に関しては究極的には本研究のコンセプトを臨床での応用の可能性を探るものであり、本研究を通して浮かびあがる問題点はむしろ有用な情報ではと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
豚での実験を進めて行く過程において生じた問題点をラットやマウスを適宜用いて問題解決の糸口を探る方法は有用であると思われた。従って、今年度も、この方法を用いて豚での実験を遂行する予定である。特に今回は胎生期肺組織移植後のステロイド(デキサメサゾン)の投与が、移植胎生期肺組織の成体肺内での生着および分化を促進するという結果は、有用であると思われる。また、ステロイドはサイクロスポリンとの併用により、allograftに対する拒絶反応の抑制という相乗効果も期待できる。臓器として血管吻合を行い移植後直ちに血流が再開される肺移植と異なり、胎生期の組織移植では、移植された組織は毛細血管が構築されるまでは、周囲からの拡散により酸素や栄養素を受け取ることになる。この点が臓器移植とは異なる点であり、豚の系ではただ単に免疫抑制を強化するのみでは解決しないと考えている。その点でステロイドの分化を促進するという効果は、今回の豚の実験系において何らかの新たな知見をもたらす可能性に期待している。豚に対するステロイドの持続投与には、皮下埋め込み型の浸透圧ポンプの利用を考えている。ラットでの検討により約1週間の持続投与を予定している。エラスターゼによる肺気腫モデルの作成においては、投与量と生じる肺気腫の組織像との関連をみるために、引き続きラットを用いた研究と豚での研究を適宜組み合わせて行う予定である。豚におけるエラスターゼの経気道的投与は気管支鏡を用いての気道内散布に加えて、経皮的経気管支的に細径チューブを目的とする気管支に留置しての持続的投与も検討している。これまで、胎性期肺移植というコンセプトで行ってきた一連の研究に協力関係にあった病理医と引き続き協力体制を維持することで、研究の精度を担保してゆく予定である。当大学の実験施設の環境、支援体制は充実しており、大動物での実験の遂行に適した環境であるといえる。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度の研究計画に基づく研究費の使用計画は、現時点において以下のように概算している。豚およびラット等の購入の80万円、浸透圧ポンプ、手術用具及び麻酔用具などの実験消耗品の購入20万円、エラスターゼ、試薬、麻酔用薬、免疫抑制剤などの薬剤購入に25万、印刷及び通信費等5万円の使用を予定している。実験計画の概略は以下の如くである。 1)胎仔肺組織をエラスターゼ誘発気腫肺に開胸下で移植し、移植肺の生着、分化、増殖能を検討する。(豚、ラット、場合によりマウスも使用):a) エラスターゼ誘導肺気腫の作成、b) 肺気腫の評価 2)胎仔肺組織をエラスターゼ誘発気腫肺に開胸下で移植し,移植肺の生着,分化,増殖能を検討する。(豚、ラット、場合によりマウスも使用):c)移植胎仔肺組織の気腫肺への移植、d)移植肺でのガス交換能および肺コンプライアンスの測定、e)肺のCT撮影と組織学的検討,免疫組織染色による増殖・分化の検討 3)気管支鏡によるレシピエント気腫肺への胎仔肺組織の経気道的投与(injection)の検討(豚):これまでの結果を参考に,肺気腫肺に対する胎仔肺組織の経気道的投与を行う。気管支の鉗子孔より穿刺針のついたチューブを挿入し,胎仔肺組織浮遊液を末梢肺組織に注入する。f)経気道的投与による気腫肺の呼吸機能回復の評価、g)経気道的投与により惹起される合併症の推察と観察 最終年度には、今回のプロジェクトの総括と今後の研究の発展性とその方向性についてまとめる。 次年度への繰越額は豚およびラット、試薬の購入に使用予定である。
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