研究課題/領域番号 |
23592063
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研究機関 | 愛媛大学 |
研究代表者 |
岡崎 幹生 愛媛大学, 医学部附属病院, 講師 (50467750)
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研究分担者 |
山根 正修 岡山大学, 大学病院, 助教 (20432643)
佐野 由文 愛媛大学, 医学部附属病院, 准教授 (60322228)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 肺移植 / 心停止ドナー / 虚血再灌流障害 |
研究概要 |
心停止ドナーからの肺移植後の虚血再灌流障害におけるmolecular mechanismは不明な部分が多く、臨床応用のためにもその解明が必要である。本研究では心停止ドナーからの肺移植後の虚血再灌流障害のメカニズムおよび抗炎症作用の働きを解明し、さらに心停止ドナーからの肺移植後の虚血再灌流障害の抑制および予防を目的とした。ラット同所性肺移植モデルを用いて、総虚血時間が4時間になるよう冷虚血肺(生体ドナー群)と温虚血肺(心停止ドナー群)を作製し、移植した。移植から1時間後に心停止ドナー群で有意にPaO2は低値だった(p < 0.05)。しかし、移植から4時間後には心停止ドナー群の肺機能は改善し、生体ドナー群と同等の良好なPaO2を呈した。心停止ドナー肺は移植後にレシピエント体内で著明に肺機能が改善しており、このような現象は生体ドナー群ではみられにくく、新しい発見と考えられた。また、心停止ドナーからの肺移植後、速やかに虚血再灌流障害が抑制されており、抗炎症性サイトカインなどの抗炎症作用が重要な働きをしている可能性が示唆された。さらに、肺機能だけでなく、グラフト内のサイトカイン(IL-1b, IL-6, MCP-1, MIP-2, TNF-a, ICAM-1, cox-2)の発現量や経時的発現パターンをPCR法で分析したところ、両群で非常に異なっていた。この結果から、冷虚血再灌流障害と温虚血再灌流障害のメカニズムに相違があることが示唆された。また、これらのメカニズムの解明は心停止ドナーからの肺移植後の虚血再灌流障害に対する治療のターゲットの特定につながると考えられ、引き続き本研究を推進する必要がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
肺移植におけるドナー不足は深刻で、その改善策として心停止ドナーからの肺移植がある。しかし、心停止ドナーからの肺移植後の虚血再灌流障害におけるmolecular mechanismは不明な部分が多く、臨床応用のためにもその解明が必要である。本研究では、心停止ドナーからの肺移植後の虚血再灌流障害のメカニズムおよび抗炎症作用の働きを解明し、さらに心停止ドナーからの肺移植後の虚血再灌流障害を抑制・予防することを目的とする。今回、ラット同所性肺移植モデルを作製できた。総虚血時間が4時間になるよう冷虚血肺(生体ドナー群)と温虚血肺(心停止ドナー群)を作製した。左片肺移植から1時間後と4時間後に肺機能を測定した。また、グラフト肺内のIL-1b, IL-6, MCP-1, MIP-2, TNF-a, ICAM-1, cox-2, PAI-1をPCR法で分析した。これらから、心停止ドナー肺は移植後にレシピエント体内で著明に肺機能が改善することの発見や、冷虚血再灌流障害と温虚血再灌流障害のメカニズムの相違の示唆など、一定の成果が得られた。
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今後の研究の推進方策 |
心停止ドナー肺は移植後にレシピエント体内で著明に肺機能が改善しており、このような現象は生体ドナー群ではみられにくく、新しい発見と考えられた。また、心停止ドナーからの肺移植後に速やかに虚血再灌流障害が抑制されており、抗炎症性サイトカインなどの抗炎症作用が重要な働きをしている可能性が示唆されるため、まず心停止ドナーからの肺移植後虚血再灌流障害における抗炎症作用の分析を推進する。心停止ドナーからの肺移植後のグラフト肺内の抗炎症性サイトカインなどの抗炎症物質(IL-10、HO-1など)、MAPKsなどをPCR法、ウェスタンブロッティング法で解析する。また、低用量一酸化炭素(CO)は肺移植後の虚血再灌流障害を抑制するとされるが、今まで肺移植後の呼気CO濃度を測定した実験の報告はなく、明らかになっていない。心停止ドナーからの肺移植後のレシピエントの呼気CO濃度を経時的にモニタリングし、呼気COおよびグラフト内の抗炎症物質との関係を分析する。
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次年度の研究費の使用計画 |
実験動物、実験用縫合糸の他、PCR、フローサイトメトリー、ウエスタンブロッティング等に使用する各種抗体や、染色用試薬に使用する。また機器使用料、動物飼育料、学会参加費用等にも使用する計画である。
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