現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
肺移植におけるドナー不足は深刻で、その改善策として心停止ドナーからの肺移植がある。しかし、心停止ドナーからの肺移植後の虚血再灌流障害におけるmolecular mechanismは不明な部分が多く、臨床応用のためにもその解明が必要である。本研究では、心停止ドナーからの肺移植後の虚血再灌流障害のメカニズムおよび抗炎症作用の働きを解明し、さらに心停止ドナーからの肺移植後の虚血再灌流障害を抑制・予防することを目的とする。同所性肺移植モデルを作製し、総虚血時間が4時間になるよう冷虚血肺(生体ドナー群)と温虚血肺(心停止ドナー群)を作製した。左片肺移植から1時間後と4時間後に肺機能を測定し、心停止ドナー肺は移植後にレシピエント体内で著明に肺機能が改善することが明らかとなった。また、グラフト肺内のIL-1b, IL-6, MCP-1, MIP-2, TNF-a, ICAM-1, cox-2, PAI-1をPCR法で分析したところ、冷虚血再灌流障害と温虚血再灌流障害のメカニズムの相違が示唆された。さらに、IL-10、HO-1、p38MAPKsなどの抗炎症作用について分析したところ、移植から1時間後に心停止ドナー群で有意に高発現しており、心停止ドナーからの肺移植後の虚血再灌流障害が速やかに抑制されたのは、抗炎症作用が重要な働きをしているためであることが示唆された。このように一定の成果が得られている。
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