研究概要 |
TrkB/BDNF経路を標的とした肺神経内分泌(NE)腫瘍に対する診断および治療法を開発することである。目的の達成は、次の三段階、すなわち、1.TrkB/BDNF経路の診断・予後予測への応用を検証するための、肺NE組織におけるNTファミリー分子発現プロファイルを作成、2.TrkB/BDNF経路の治療標的としての可能性を検証するための、NE腫瘍細胞株を用いて、TrkB/BDNF経路の細胞生物学的意義の解析、および、3.臨床応用の可能性を高めるための、特異性の高いTrkBおよびBDNF抗体の作成により遂行する。 我々は既に各種癌組織のTrkB/BDNF発現プロファイルの作成を行い、TrkB/BDNF経路関連分子発現を解析した。小細胞癌8例、大細胞神経内分泌癌(LCNEC)11例、大細胞癌10例、腺癌20例、扁平上皮癌55例の計104症例での免疫組織学的解析を行った。各組織型毎にTrkB高発現群と低発現群に分け、その予後解析を行った。LCNECはすべてTrkB高発現であった。全組織型における解析でTrkB高発現群は有意に病期分類で進行例が多く、術後再発率が高い結果であった。また、TrkB陽性肺NE細胞株(NCI-H460, NCI-H810)を標的細胞とした検討では、TrkB/BDNF経路が、細胞増殖には影響を及ぼさないが、細胞浸潤(Matrigel invasion assay)に大きく関与していることをsiRNAを用いて検証した。また、その浸潤能にMMP-2,MMP-9が関与していることも検証し得た。またTrkB陽性肺NE細胞株(NCI-H460, NCI-H810)両細胞株における足場非依存性増殖はTrkB/BDNF経路の活性化により亢進し、経路抑制により低下した。さらにマウス移植モデルにおいて、移植細胞のTrkB発現抑制により有意な腫瘍形成能の低下を認めた。
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