研究課題/領域番号 |
23592069
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研究機関 | 熊本大学 |
研究代表者 |
鈴木 実 熊本大学, 生命科学研究部, 教授 (80312940)
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研究分担者 |
池田 公英 熊本大学, 医学部附属病院, 助教 (20448525)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 非小細胞肺癌 |
研究概要 |
非小細胞肺癌の増大・浸潤転移に、腫瘍組織における血管新生は必要不可欠なステップである。それゆえ、血管新生の機序を理解し、血管新生をコントロールすることは、肺癌治療成績向上に重要かつ急務と言える。SLIT-ROBOシグナルとCXCR4-CXCL12シグナルは、乳癌や授乳期乳腺組織におけるVEGFによる血管新生との関連性が言われている。本年度は、特に、SLITに焦点を絞り、研究を行った。肺癌細胞株9個を用いた。また熊本大学呼吸器外科で2010年より2011年に手術を行った80例の肺切除検体を用いた。ゲノム全体の低メチル化を反映すると言われるLINE-1の低メチル化を測定した。また、SLIT2、MAL、IGFBP7の異常メチル化を測定した。ともに、測定にはPyrosequencing法を用いた。またEGFR遺伝子変異検索をDirect sequence法で行った。肺癌腫瘍株の検討では、発現と異常メチル化の逆相関がSLIT2で9/9、MALで8/9、IGFBP7で5/7と良好な関係を示した。すなわち、これらの遺伝子は主に異常メチル化によって発現制御を受けていることが示唆された。また原発巣の検討では、非癌部肺組織と比較してROC curveを測定し、cut-off値を求めた。その結果、LINE-1は53%の症例で低メチル化を認めた。SLIT2、MAL、IGFBP7はそれぞれ、67%、42%、55%の症例で異常メチル化を認めた。以上から、SLIT-ROBOシグナルにおける、SLITは非小細胞肺癌で、重要な役割を果たしていることが示唆された。また他の遺伝子についても今後さらなる検討が必要である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度の研究でSLITシグナルが非小細胞肺癌で異常を示していることが明らかになった。当初、SLIT2の異常メチル化検討には、methylation specific PCR (MSP)を用いて検討したが、癌部と非癌部でともに異常メチル化を示し、癌特異的な変化と捉えることが出来なかった。そのため、各CGサイトのメチル化の程度を数値化して測定出来るPyrosequencing法を用いることにした。そのため、さらに詳細にSLIT2の異常メチル化を測定出来ることになった。Pyrosequencing法では、癌部で特異的に異常メチル化をしていることを示すことが出来た。また、他の3つの遺伝子(LINE-1, MAL, IGFBP7)もメチル化の異常があることを示すことが出来た。
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今後の研究の推進方策 |
SLIT2とSLIT3、ROBO1~ROBO4の何れかが正常発現し、VEGFも正常発現している細胞株を用いて、SLIT2とSLIT3、ROBO1~ROBO4の正常発現している遺伝子をsiRNAによりknock downをする。それにより、CXCL12、CXCR4、VEGFのmRNAとタンパク発現がどのように変化するか、RT-PCR、Western blotにより確認する。 逆にSLIT2とSLIT3、ROBO1~ROBO4が発現低下している細胞株にその発現低下遺伝子をベクターに導入、強制発現させて、CXCL12、CXCR4、VEGFのmRNAとタンパク発現がどのように変化するか、RT-PCR、Western blotにより確認する。以上から、SLIT-ROBOシグナル、CXCL12-CXCR4シグナルとVEGFシグナルの関係を明らかにする。すなわち、上流経路であるSLIT-ROBOシグナルのどの因子がVEGFシグナルに影響を及ぼしているか、また、血液幹細胞や転移に重要と考えられているCXCL12-CXCR4シグナルと血管新生がどのように相互作用しているかを明らかにする。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度も、物品費の使用が大半を占める予定である。旅費使用については、肺癌学会と胸部外科学会を予定している。また論文作成をひとつ予定しているので、その分を予定している。
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