研究課題/領域番号 |
23592071
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研究機関 | 奈良県立医科大学 |
研究代表者 |
内藤 洋 奈良県立医科大学, 医学部, 助教 (00316069)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 人工気管 |
研究概要 |
線維芽細胞から作成した弾力性のあるチューブ状の組織を、軟骨細胞から作成した虚脱に対する強度をもつリング状の組織が補強する、という本来の気管に準じた構造を持つ人工気管の作成を目的とした。これまでの検討で線維芽細胞から作成した弾力性のあるチューブ状の組織の作成には成功していた。しかし、同組織はラットに移植すると吸気時の陰圧で組織が虚脱し、十分な強度を持つまでの組織作成には至っていない。最終的な目標は、本来の気管と同様に軟骨細胞から作成したリング状組織で弾力性のあるチューブ状の組織を外固定することであるが、細胞の入手の問題から、まず、骨芽細胞で作成したリング状の組織をチューブ状の組織の周囲に固定する事によって強度をもつ人工気管を作成することとした。本年度は、骨髄間葉系幹細胞の骨芽細胞への分化誘導についての詳細な検討を行い、続いて、それらの組織を組み合わせて本来の気管に準じた組織の作成の可能性について検討した。ラットの大腿骨から間葉系幹細胞採取し、その細胞を液状のコラーゲンと混合、リング状の鋳型内で三次元培養し、リング状の組織を作成した。組織作成中にアスコルビン酸、デキサメタゾン、β-グリセロフォスフェイトを培養液に添加することによって間葉系幹細胞を骨芽細胞へ分化誘導した。培養液中へのオステオカルシンの分泌量の測定、細胞外マトリックスへのカルシウムの沈着量の測定から骨芽細胞への分化を確認した。最後に線維芽細胞で作成したチューブ状の組織の周囲に骨芽細胞から作成したリング状の組織を接するように配置し培養することによって複合組織を作成した。オステオカルシン、カルシウムとも上記の薬剤を添加することによって増加し、間葉系幹細胞が骨芽細胞へ分化したことが明らかとなった。また、肉眼的にも、チューブ状の組織の周りにリング状の組織が配置された人工気管組織の作成に成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
コラーゲンゲル内での骨髄間葉系幹細胞の骨芽細胞への分化誘導について詳細な検討を行った。リング状の組織を作成すると同時に、間葉系幹細胞が良好に骨芽細胞へ分化することを分子生物学的に証明した。また、線維芽細胞からチューブ状の組織を作成することにも成功し、チューブ状の組織とリング状の組織を組み合わせることによって人工気管の作成には成功している。詳細な検討は次年度の予定だが、肉眼的にはリング状の組織は固くなっている印象である。以上の結果により、概ね予定していた実験計画を達成できていると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
予定通り、人工気管の力学的特性の検討を行うこととする。力学的特性の詳細な検討を目的に、作成した組織をフックに掛け引っ張り、単位引っ張り距離当たりの組織に掛かる張力を測定する。続いて、単位引っ張り当たりの張力から組織の硬度を検討する。比較の対象としては、線維芽細胞から作成した1層、2層、3層のチューブ状の組織を用いる。また、成ラットの気管についても同様の測定を行う。それらの結果と人工気管から得られた結果を比較検討することによって、人工気管がラットへの移植に用いることのできる可能性についての検討を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
人工気管の力学的特性の検討には多くの人工気管の作成が必要である。また、比較対象とする組織の作成など、大部分の研究費は人工気管作成に用いる消耗品に使用する予定である。なお、予定している実験に必要な測定器などは既に所有している為、現在のところ大型機器を購入する予定はない。また、実験自体も申請者のみで継続可能であるため、人件費に使用する予定もない。
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