研究概要 |
平成23年度はAT1a+/+とAT1a-/-との骨髄機能回復能力効果の相違について検討した。A. AT1a+/+とAT1a-/-との骨髄機能回復能力効果の相違の検討 :5-FUを腹腔内注射し骨髄機能の回復能力について比較検討を行いAT1a-/-は AT1a+/+と比較し骨髄組織の回復力の遅延を認めた。投与後1,3,7,14,21日に末梢血液中の血小板数と血清中のSCF, pro MMP-9, SDF-1をELISA kitを用いて測定したところ、 AT1a-/-はAT1a+/+と比較し有意に濃度の抑制を認めた。2. 腫瘍肺転移モデルを用いた検討 :A. AT1a+/+とAT1a-/-との肺表面転移巣の形成効果及び生存率の検討: AT1a+/+及びAT1a-/で3.0X105個/mlの悪性黒色腫細胞(B16F1)を尾静脈より静脈注射し、肺転移モデルを作成後2週間に、肺を摘出した後,肺表面の腫瘍コロニー数を実態顕微鏡でカウントした。また、生存率も検討した。 腫瘍転移数はAT1a-/-はAT1a+/+と比較し有意に低下を認めた、また生存率はAT1a+/+は3週間でほとんど死亡するのに対し、AT1a-/-の死亡率は20%であった。B.血小板数、SCF, pro-MMP9, SDF-1値の経時的変化の比較検討:腫瘍細胞静注1,3,7,14日に継時的に血小板数と血清中のSCF, pro MMP-9, VEGF, SDF-1をELISA kitを用いて測定するとAT1a-/-はAT1a+/+と比較し有意にこれらの低下を認めた。また7日と14日目に免疫組織化学による骨髄組織中の巨核球数について比較検討も同様でとAT1a-/-はAT1a+/+と比較し有意に低下を認めた。 今回の実験からAT1aシグナリングが、骨髄作用、特に血小板産生に関与し、それが腫瘍転移形成と関与がある可能性が示唆された。
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次年度の研究費の使用計画 |
血小板にはVEGFやSDF-1などの血管新生促進因子が含まれ、それが腫瘍の転移形成に関与している。また腫瘍転移形成にあたりは血小板の活性化は不可欠であり、その時、血小板でのp-selectinの発現の増強及び末梢血液中のsoluble-p-selectin濃度の上昇を認める(Blood 2000)。今回腫瘍転移巣形成時における血小板の活性化にAT1aが関与しているか否か検討を行う。詳細は以下に記す。A.末梢血液中のsoluble p-selectin濃度の比較検討(天野、大学院生が担当)腫瘍肺転移モデル作成後1,3,5,7,14日に採血し、ELISAを用いてsoluble p-selectin濃度について比較検討を行う。B 血小板のp-selectinの発現の比較検討(天野、江島が担当)腫瘍肺転移モデル作成後1,3,5,7,14日に採血しフローサイトメトリーを用いて活性化された血小板(CD41とCD62P)の発現について比較検討を行う。C.血中のVEGFR1+造血前駆細胞の発現の測定(天野、江島が担当)AT1aシグナリングが骨髄組織のストローマ因子を活性化させることにより骨髄組織から、VEGFR1+造血前駆細胞の動員を促し転移の形成の増強を促している可能性があると考えられるためBと同様にフローサイトメトリーを用いて末梢血液中のVEGFR1陽性細胞の発現について比較検討する。
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