研究課題
降血圧薬として使用されているアンギオテンシンII 変換阻害薬が癌の発症するリスクを低下する報告があるが長年その詳細なメカニズムは不明であった。以前我々は、AngIIの受容体であるAngiotensin type 1受容体(AT1)のサブタイプであるAT1aが血管新生促進因子の1つである血管内皮増殖因子(Vascular Endothelial Growth Factor=VEGF)を誘導し、腫瘍血管新生を増強することを報告した(Carcinogenesis 2005)。今回、腫瘍肺転移の際にもAT1a が関与しているか否か検討した。AT1aは、血小板、血管平滑筋などに発現している。最近、癌の浸潤・転移に対する微小環境の役割が注目され、原発巣と同様に癌細胞と転移組織との相互作用の結果、動員された血小板、骨髄細胞が重要な役割を担っていると考えられている。野生型マウス(以下WT),及びAI1a受容体欠損マウス(以下AT1aKO)から血小板を描出し、Angiotensinを添加すると血小板の活性化のマーカーであるP-selectinの発現がAT1aKOで有意に低下を認め更に、腫瘍細胞(B16F1)静脈注射後4週で、AT1aKOでは肺表面のコロニー形成の低下を認め、また血中の血小板におけるP-selectinの発現の低下を認めた。更にP-selectin中和抗体を投与すると、WTでは肺の転移は抑制を認めたが、AT1aKOでは抑制を認めなかった。この事から肺の転移形成にあたり、血小板の活性化が必須で、それはAT1asignalingに依存しいている事が考えられた。腫瘍転移形成に関与する血液幹細胞(CXCR4+VEGFR1+)の末梢血液及び肺組織の集積を検討したところ、AT1aKOで低下を認めた。以上の結果から、AT1a signalingによる腫瘍転移制御は血小板の活性化だけでなく、CXCR4+VEGFR1+細胞の動員にも関与している事が示唆された。上記の事項はAm J Pathol. 182(2):553-64 2013,アメリカ胸部疾患学会ミニシンポジストとして発表,第10 回森村豊明会奨励賞受賞(2013)に至った。
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