本研究では肺癌切除例において、第二世代低酸素トレーサー62Cu-ATSMの集積部位を切除標本における病理組織所見と対比することにより、その集積部位の腫瘍生物学的意義を調べることが目的である。平成23年度に研究に登録された肺癌症例は22症例(23撮像)であった。内訳は男性17例、女性5例である。肺癌組織型別にみると、腺癌8例、扁平上皮癌6例、大細胞神経内分泌癌1例、大細胞癌1例、小細胞癌1例、pleomorphic cancer 1例、腺扁平上皮癌1例、非小細胞肺癌(細胞型記載なし)が3例であった。腫瘍病期はstage IA2例、IB 4例、IIA 3例、IIB 2例、IIIA 5例、IIIB 1例、非手術症例5例であった。 本年度はこれらの症例で、新規トレーサーである62Cu-ATSMと、現在広く使用されているトレーサーであるFDGの腫瘍への集積度(SUVmax)について比較検討を行った。また、肺癌の組織型の違いにより集積度に違いがあるかも検討を行った。病理組織学的な評価はHE染色の他に、低酸素組織で発現されると考えられるhypoxia inducible factor 1 alpha(HIF1 alpha)の免疫染色の準備を進めている。またHE染色所見から、62Cu-ATSMは腫瘍間質が豊富な組織に集積していることが予想されたため、 fibroblast growth factorなどの腫瘍間質のマーカーの免疫染色の準備を進めている。 肺癌における62Cu-ATSMの生物学特性はほとんど解明されていない。今までの我々の症例における検討では、62Cu-ATSMはFDGとは明らかに集積パターンが異なっており、今後さらに集積パターンや生物学的意義(腫瘍悪性度、患者予後との関連棟も含めて)を詳細に調べることは重要であると考えている。
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