研究課題/領域番号 |
23592076
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研究機関 | 金沢医科大学 |
研究代表者 |
佐久間 勉 金沢医科大学, 医学部, 教授 (90215674)
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キーワード | RAGE / 再潅流肺傷害 / 周術期 / ヒト切除肺 / 肺癌 / 肺嚢胞 |
研究概要 |
ラット肺での研究:1. 肺切除術の周術期モデルの確立を目的とした。SDラットを用い、左虚血再潅流肺傷害モデルを作成して、虚血時間が周術期延命に及ぼす影響を研究した。虚血再潅流は肺傷害のモデルは作成できたが、ラットを延命させることは困難であり、モデルの変更を行った。摘出ラット無潅流肺モデルを作成し、肺虚脱と保存温度がRAGEに及ぼす影響の研究を行った。ラット肺を摘出し、1群4匹:1時間37℃で肺膨張、2群4匹:1時間37℃で肺虚脱、3群4匹:1時間4℃で肺膨張、4群:1時間4℃で肺虚脱、その後1時間37℃で肺膨張を行い、5ml生理食塩水で3回肺胞洗浄を行い、洗浄液を保存している。 2. 糖尿病治療薬のピオグリタゾンは全身浮腫の副作用がある。その薬剤が肺胞水分クリアランスに及ぼす影響を研究した。ピオグリタゾンはナトリウムチャンネルを介する肺胞水分クリアランスを減少させる(論文作成中)。 ヒト切除肺での研究:1. RAGE:RAGEはCOPDおよび非COPDの症例6例ずつを染色した。胸膜近くの嚢胞性変化および周囲の肺胞はRAGE陽性であり、RAGE陽性の肺胞マクロファージは極めて少なかった。COPD症例ではRAGE陽性の肺胞マクロファージの集積を嚢胞、嚢胞壁そしてその周囲の肺胞に認めた。I型肺胞上皮細胞およびブラ壁へのRAGEの発現は非COPDに比べ減弱していた。2.AGEs:AGEsは肺癌、非COPDおよびCOPDをそれぞれ2症例染色した。肺癌では血管内皮および肺胞上皮にAGE陽性であり、癌細胞には染まりが悪かった。気道内の繊毛上皮もApilal patternに陽性であった。非COPD症例では繊毛上皮の染まりが肺癌に比べやや弱であった。3. HMGB1:HMGB1は肺癌症例1例のみの染色し、1000倍で染色することとした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
ラット肺での研究:研究モデルの確立に時間を要した。ラットでは急性虚血再潅流肺傷害のモデルは作成できたが、傷害後2日以上延命させる慢性モデルの作成は困難である。そのため、無潅流下肺傷害モデルを作成して、移植ドナー肺の保存で重要な肺虚脱と保存温度が肺傷害に及ぼす影響と、RAGEの役割の研究を開始した。このモデルは安定しており、研究が進行中である。肺傷害にピオグリタゾンが重要な働きを有するのは判明し、研究を追加しピオグリタゾンとの関係を研究し、新たな知見が認められたが、論文作成のためには追加研究が必要である。ヒト切除肺での研究:RAGE抗体での免疫染色における濃度調節がむずかしく、その決定に時間を必要とした。しかし、ヒト切除肺での免疫染色方法は確立できた。COPD肺、嚢胞肺での研究は進行しており、新たにAGEsやHMGB1を開始した。研究は順調に進行している。そのため、研究研究計画全体としては、やや遅れていると区分した。
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今後の研究の推進方策 |
平成24年度の研究で達成できなかった研究を遂行するとともに当初の25年度予定の研究を遂行する。肺胞洗浄液のRAGE濃度変化を測定する。また、傷害肺組織におけるRAGEの発現を研究する。さらに、平成24年度以降の研究予定であった酸素濃度、肺保存濃度、低栄養の影響を研究する。また、肺胞水分クリアランスとRAGEの関連を研究する。肺傷害におけるRAGEとピオグリタゾンの関係を研究する。ヒト切除肺の潅流モデルを作成して、潅流液、肺胞洗浄液のRAGE濃度を測定する。ヒト肺の研究では、COPD、非COPD、肺嚢胞、肺癌の染色数を増やし、さらにAGEs, HMGB1で染色し、RAGEの役割を決定する。また、ラット肺と同様に酸素濃度、肺保存濃度の影響をヒトで研究する。以上を遂行し3年間の研究を完成させる。
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次年度の研究費の使用計画 |
該当なし
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