研究概要 |
ヒト肺で原発性肺癌におけるRAGEの発現と臨床病理学的因子およびAGE、HMGB-1、S100A4発現との関係を研究した。RAGEは扁平上皮癌と比べ腺癌と小細胞癌で亢進していた。腺癌中では低分化な癌で発現が亢進していた。粘液非産生型腺癌は産生型と比し発現スコアが高値を示した。腺癌では進行例で発現スコアの増加傾向を認めた。全例での解析でRAGEとAGEsの発現に逆相関が示された。原発性肺癌でのRAGEの発現は組織型と関係し、腺癌では分化度、粘液産生能と関連し、病期の進行とも関連する。更に、慢性閉塞性肺疾患(chronic obstructive pulmonary disease, COPD) とヒト肺組織におけるRAGE蛋白の発現解析により、そのCOPDの発症と進展における関与を研究した。 I型肺胞上皮細胞と肺胞マクロファージにおけるRAGEの発現は、対照群と比較しCOPD群で有意に高く、1秒率と負の相関を認めた。細気管支粘膜上皮細胞では両群間に有意な差異は認めず、さらにRAGE発現と喫煙指数、%肺活量との関連はいずれの細胞群でなかった。肺胞上皮細胞と肺胞マクロファージで発現するRAGEがCOPDの発症と進行に関係する。 ラット肺での研究:PPARγ刺激薬は腎臓ではナトリウムチャンネルを介してイオン輸送に関係するが、肺胞上皮細胞における作用機序は不明である。SDラットを用いて肺胞刷分クリアランスを測定して、PPARγ刺激薬であるピオグリタゾンの効果を研究した。肺胞水分クリアランスはピオグリタゾンにより減少した。ピオグリタゾンにナトリウムチャンネル阻害薬を加えると値は更減少した。β2交感神経刺激薬により亢進した。ピオグリタゾンは肺胞上皮細胞のナトリウムイオン輸送を介する肺胞水分クリアランスを抑制し、肺胞水分バランスを調整する。
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