肺腺癌に対する分子標的治療研究が進み、EGFR-TK変異型肺癌に対するelrotinib、EML-4ALK 発現型肺癌への crizotinibの有効性が明らかとなった。また次世代シーケンサーの台頭によりさらに多くのdriver oncogeneが報告され、新しい肺癌標的療法が樹立されてきている。一方でRas変異型肺腺癌に対する有効な標的療法は確立されておらず、未だundrugable targetと言われている。 我々は、Ras変異型肺腺癌に対する新しい治療法開発を目的とし、新規HSP90阻害薬AUY922の抗腫瘍効果を検討した。当該阻害剤は、Ras変異型でRas依存型である肺腺癌株: H358、H441における細胞増殖を抑制し、細胞死を誘導した。一方でRas変異型ながらRas非依存型である肺腺癌株A549に対する増殖抑制効果は微弱であった。さらにKRas野生型であるH322株は本薬剤に対して抵抗性であった。 さらに他のdriver変異を持つ肺癌に対する抗腫瘍性を解析するために、EGFR変異型肺腺癌株H1690、H1975 およびEML4-ALK肺腺癌株H2220を用いた検討を行ったところこれらのすべての株は、AUY922に対してsensitiveであった。以上より新規HDAC 阻害剤:AUY922は、Ras依存性のRas変異型肺腺癌株に対して、さらに他のdriver変異を持つ肺癌に対しても抗腫瘍性を示す可能性があることが示唆された。
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