研究課題/領域番号 |
23592079
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研究機関 | 産業医科大学 |
研究代表者 |
花桐 武志 産業医科大学, 医学部, 准教授 (30299614)
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研究分担者 |
竹之山 光広 産業医科大学, 医学部, 非常勤講師 (10309966)
浦本 秀隆 産業医科大学, 医学部, 講師 (90389445)
重松 義紀 産業医科大学, 医学部, 助教 (10546469)
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キーワード | 肺癌 / 腫瘍免疫 / 免疫逃避機構 / 制御性T細胞 / TGF-β / Foxp3 / 所属リンパ節 |
研究概要 |
制御性T細胞(Treg)は抗腫瘍免疫応答を抑制し、癌の進展、転移との関連性が指摘されている。肺癌の免疫逃避機構の解明を行うため、肺癌患者における所属リンパ節や、末梢血リンパ球の制御性T細胞(Treg)の発現を検出し、その臨床的意義を見い出すことを目的に研究を行っている。方法は、所属リンパ節および末梢血のリンパ球をモノクーロナル抗体にて、CD4、CD25、Foxp3を染色し、細胞内FACSにおいて解析し、CD4,CD25、Foxp3のいずれもが陽性であるリンパ球をTregとした。非小細胞肺癌176例の内、術前治療の行われていない、また免疫抑制剤の使用のない158例を対象とした。Tregの比率は、リンパ節において、末梢血リンパ球よりも有意に高頻度であった。病理病期別のリンパ節リンパ球では、IA期1.29%、IB期1.15%、II期1.31%、III期1.37%であった。リンパ節リンパ球においてCD4陽性細胞の中のTregの割合が、1%より低い群を低値群、1%以上を高値群とした場合、5年生存率は低値群で84.4%、高値群63.5%であり、有意に高値群の予後が不良であった。病理病期I期においても、5年生存率は低値群で91.4%、高値群84.8%であり、有意に高値群の予後が不良である事が明らかとなった。 また、in vitroの実験系において、CTL誘導時にTGF-βを添加すると、CTL誘導が阻害され、制御性T細胞の増加を認めた。CTL誘導時に制御性T細胞を除去することで、CTLの誘導効率が上がることを示した。制御性T細胞による、CTL誘導の抑制にはTGF-βが関与しており、制御性T細胞を除去することで、腫瘍特異的CTLの誘導効率が改善することを、Oncological Letter (4: 625-630. 2012)に発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
in vitroの実験系において、CTL誘導時にTGF-βを添加すると、CTL誘導が阻害され、制御性T細胞の増加を認めること、およびCTL誘導時に制御性T細胞を除去することで、CTLの誘導効率が上がることを明らかにし、論文発表した。肺癌所属リンパ節における制御性T細胞の割合をCD4・CD25・Foxp3を指標にフローサイトメトリーにより解析し、制御性T細胞の多寡が予後因子となることを明らかにしてきたため。
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今後の研究の推進方策 |
肺癌所属リンパ節における制御性Tリンパ球をFoxp3の発現を指標にReal time PCRにて、評価予後因子となるか検討する。さらに、所属リンパ節への微小転移を、サイトケラチン(CK19)をマーカーとしてReal time PCRで評価し、制御性Tリンパ球の存在との相関性を検討する。また肺癌組織内における免疫抑制物質であるIndoleamine-pyrrole 2,3-dioxygenase (IDO)を測定し、制御性Tリンパ球との割合の相関を検討する。
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次年度の研究費の使用計画 |
細胞培養に関わる培地やディスポザブルのプラスティック製品や、細胞表面抗原の抗体の購入、また遺伝子解析に必要な種々の消耗品ならびにキット製剤や遺伝子増幅に必要な試薬の購入に対し物品費80万円の予算を計画している。また、旅費に関しては研究成果発表に要する国内旅費20万円、その他費にはRI購入費・動物購入費・検査料・雑誌投稿料とし10万円の予算を計画している。
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