研究課題
平成23年度までに、脳梗塞急性期の脳保護薬として用いられているエダラボンは、ローズマリー精油由来のジテルペノイドであるカルノシン酸による培養ヒトアストロサイトの神経成長因子NGF発現誘導を協調的に亢進させることを明らかにした。その協調効果は低酸素及び再酸素曝露下においても認められ、その際、酸化還元感受性転写因子Nrf2の核内蓄積が必要であると同時に、Nrf2蓄積に一部分が関与していたJNK (c-Jun N-terminal kinase) のリン酸化や、 Nrf2蓄積とは独立のMEK (mitogen-activated protein kinase/extracellular signal-regulated kinase kinase) のリン酸化が部分的に関与していることを明らかにした。平成24年度には、カルノシン酸の未知の抗神経変性機能を検討したところ、認知症の原因分子として最有力とされるアミロイドβ(Aβ)ペプチドの産生(分泌)を、培養SH-SY5Yヒト神経芽腫細胞において抑制することを発見した。抑制されることが確認されたAβはAβ1-40及びAβ1-42である。この抑制にはNrf2は介在せず、カルノシン酸により誘導されたαセクレターゼによる、アミロイド前駆体タンパク質のα切断亢進が関与していた。特に、αセクレターゼのなかでもTACE (tumor necrosis factor-α-converting enzyme、別名 a disintegrin and metalloproteinase-17, ADAM17)が重要であることを明らかにした。以上の結果は、カルノシン酸及びその類似構造化合物と既存の脳保護剤との併用的応用により、脳内でより効果的な神経保護・維持機能を引き出す可能性に加え、抗認知症機能を促進する可能性も示唆している。
2: おおむね順調に進展している
上述した研究実績の概要のとおり、平成24年度の研究計画についておおむね遂行することができたため。
平成24年度当初に計画した、遺伝子発現マイクロアレイ法による網羅的検索結果に基づく、有力遺伝子候補に絞り込んでのカルノシン酸・エダラボンの協調作用機序への関与の検討結果(たとえば、グルタチオン合成関連遺伝子の活性化)は、すでにNrf2を過剰発現させた神経細胞-グリア共培養系などを用いて行われた他施設からの検討結果を超えるものではなかった(Shinら、J Neurosci 2003;Liuら、PNAS 2007;Malhotraら、Nucleic Acids Res 2010;Valdesら、Genes Nutr 2013)。そこで、予め研究計画調書に記したとおり、すなわち、上述の研究実績の展開に沿って、研究の重点を神経(系)細胞における神経変性疾患関連遺伝子の解析へシフトする方策をとる。平成25年度は平成24年度に引き続いて、たとえば、アルツハイマー病をはじめとする種々の神経変性疾患の治療戦略にもかかわる疾患原因分子生成の制御候補としてのセクレターゼ(α-, β- and γ-secretases)やアポトーシス関連酵素(caspase-3/7)などに対する当該薬剤の効果にも注目し、有望な新知見を得ていく。
該当無し
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