研究概要 |
1.AT1Rの阻害が海馬CA1領域の神経細胞死を抑制する. ラットにAT1R阻害剤(ARB)であるcandesartan(0.1, 1, 10 mg/kg/day)またはvehicleを経口投与し,Smith法により全脳虚血(5分間,31-35 mmHg)を行った.虚血後もcandesartanまたはvehicleの投与継続し,虚血後5日に経心的に潅流固定し,海馬CA1領域の生存神経細胞を評価した.Vehicle群では殆どの神経細胞が細胞質の変形や好酸性変化,核の濃縮像を起こして死滅し,生存する細胞はわずかに5%以下であったが,candesartan 1 mg/kg/day投与群では生存細胞数は30%と増加した.前年度の結果を動物数を増やして検討し,結果を確認した. 2.AT1R阻害薬投与群と非投与群で酸化ストレスの発生に差がある. 同様の実験系を用いてhydroethidine法により酸化ストレスの発生を観察した.AT1Rを阻害したグループでは虚血に対して脆弱な海馬CA1領域の神経細胞における虚血後酸化ストレス(superoxide)の発生が抑制された. 3.AT1R阻害剤投与群でアポトーシス経路のどのレベルで阻害されているか. 分子生物学的手法(Western blot,細胞分画法,免疫染色)により検討を行い、投与群ではcytochrome cのミトコンドリア外漏出が多い傾向にあった.今年度の結果、統計学的優位差をもってこの現象が明らかとなった.
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