研究課題
昨年度震災により、共同利用契約を締結していた日本原子力研究開発機構の実験原子炉jrr-4が停止、それ以降再開のめどがたたずに、原子炉を線源とした中性子照射による実験照射が不可能となった。このため、モデル動物の治療実験は行うことができなかった。このため、動物実験は断念し、培養細胞による血管内皮細胞へのホウ素化合物取り込みについて、検討を行った。用いたホウ素化合物は、borono-phenylalanineおよび、その組成にホウ素を含有した新規合成脂質を用いたboronated liposomeである。いずれも非特異的な細胞内ホウ素濃度が検出された。今後動物実験を前提とした生体内分布、特に血液中濃度と、血管内皮細胞でのホウ素濃度の変動を検討し、照射実験に関する至適投与量・投与時期について検討する。また、ガドリニウム化合物による中性子捕捉療法についても、細胞実験で検討を行った。用いたガドリニウム化合物はすでにMRI造影剤として臨床で医薬品として使用されているGd-DTPAである。この薬剤はwashoutが早く、また中性子捕捉によってγ線を発生するため、悪性腫瘍をターゲットとした中性子捕捉療法には不適であるとされてきた。細胞内濃度は、動物投与後、正常組織、腫瘍組織とも速やかに低下することが確認された。血管内皮細胞の取り込みおよび血中濃度推移によって可能な照射線量をシミュレーションで検討する予定である。
4: 遅れている
震災により、原子炉設備の実験利用が不可能になったため。
東海村 原子力研究開発機構における実験照射再開には、一年以上を要する見込みである。このため、京都大学実験原子炉の共同利用を申請し、認可された。これによって引き続き、動物による血管形成術後、再狭窄モデルを用い、治療実験を検討してゆく。これまでに準備可能であった、ホウ素およびガドリニウム化合物について、有用性を比較検討する。
主に京都大学実験原子炉での照射実験。細胞実験および動物実験にあたり、旅費、動物搬送費用、消耗品。また、組織切片の組織学検討のための、免疫染色等の消耗品を予定している。
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Appl Radiat Isot.
巻: 69 ページ: 1790-92
10.1016/j.apradiso.2011.03.049