研究課題/領域番号 |
23592089
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
加藤 弘樹 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (20448054)
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研究分担者 |
畑澤 順 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (70198745)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | PET / MRI / 分子イメージング |
研究概要 |
自発性辺縁系発作モデル動物、脳主幹動脈を塞栓させた虚血モデル動物などにおける、中枢性ベンゾジアゼピン受容体結合イメージング、末梢性ベンゾジアゼピン受容体結合イメージング、脳血流評価などを施行するに先立ち、使用する撮像装置などの調節、設定を行った。まず、脳機能画像を得る目的で使用する小動物用PET撮像装置の設定を行ったところ、撮像装置内の電子回路基盤に不調があることが明らかになった。このため、代替手段を確保する必要が生じた。代替機器の性能評価、再調整の目的で、正常ラットにF-18を静注し約1時間後に全身を代替機器で撮像した。まず大動物用PET撮像装置(SET-2300W scanner;島津製作所)の評価を行ったところ、ブドウ糖代謝画像を正常に取得できることを確認したが、空間分解能がやや低く、脳の微細構造を評価するにはやや困難であることが分かった。さらに、小動物用PET/MRI装置(当施設で開発)の使用の評価を行ったところ、トレーサの分布は良好に評価できるものの、ボクセル値の精度が一部低いことが明らかになった。これに対して、撮像。および画像再構成プログラムを解析し、一部修正を行った。その結果、ボクセル値を精度よく評価することに成功した。さらに、脳形態画像を取得する目的で使用するPET/MRI装置のMRI部分の評価を行った。その結果両モダリティの位置にずれが生じうることが判明したため、これを修正した。ヒトでの臨床研究では、てんかん患者における中枢性ベンゾジアゼピン受容体の脳組織当たりの密度を評価するに先立って、健常人の中枢性ベンゾジアゼピン受容体密度を評価する目的で、健常人に関するI-123 iomzenil SPECTのデータ解析を行い、その分布、加齢による変化などに関する新規性の高い知見を得た。得られた結果を学会などにて発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
大阪大学分子イメージングセンターにおいて、モデル動物の実験を行うにあたり、PET、MRIなどの機材の調整を行ったところ、一部の装置の不調が明らかになり使用が困難になったため、代替手段の検討、および代替機材の性能を評価したところ再調節が必要になった。これらの装置は非常に高価であり、部品やメーカによる調整は当該研究費を超える高額の費用を要する。これを我々にて行い、目的の性能を得られるよう調整し得たことは、今後の研究を順調に遂行させるうえで非常に有意義な進捗であったと考えられる。また、モデル動物の機能画像、形態画像を評価する上で、同種の正常動物の画像を取得することは必須であり、これらの一部を同時に取得したことは意義が大きいと考えられる。さらに、臨床研究においても同じく正常画像の解析は、疾患脳の機能画像評価を行う上で必要であり、健常人に関する解析を遂行できたことは有意義であると考える。
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今後の研究の推進方策 |
虚血モデル、自発性辺縁系発作モデル動物などのイメージングに先立ち、モデル動物の作成、確保を行う。まずラットの一過性および永久内頸動脈閉塞モデルの作成を行い、O-15 H2O PETによって、脳血流の評価を行う。また、PET/MRIを用い、梗塞部位のin vivoでの同定をおこない、機能画像との重ね合わせを作成する。これによって虚血部位の範囲や、結紮時間との関連を評価し、基礎的な虚血病態を把握する。さらに、末梢性ベンゾジアゼピン受容体リガンドC-11 PBR28を用い、病巣部位でのミクログリアの活性を評価する。これに引き続き、可能な範囲でC-11 酢酸、C-11 flumazenilによる、アストログリア活性、中枢性ベンゾジアゼピン受容体結合を評価する。ヒトに対する臨床研究では、健常人を対象として研究成果をまとめ、論文発表を行う。さらに、てんかん患者を対象とした中枢性ベンゾジアゼピン受容体密度分布の特性に関して、SPECTデータに基づいた解析を施行する。また、上記で得られた結果を海外、国内の学会で発表する。
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次年度の研究費の使用計画 |
今年度は、別記のとおり一部実験の遂行を変更せざるを得ない状況であったため、研究費の一部に変更の必要が生じた。一方、次年度の研究を施行するに当たっては、大阪大学分子イメージングセンター使用料をはじめ、解析装置、実験試薬、研究発表旅費、抄録、論文の英文校正、論文別刷りなどに充てる研究費が必要である。また、次年度以降も実験、解析、研究発表を引き続き行う必要があると考えられ、大阪大学分子イメージングセンター使用料をはじめ解析機器や旅費、英文校正費用などの諸費用が必要となる見込みである。
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