研究課題/領域番号 |
23592089
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
加藤 弘樹 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (20448054)
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研究分担者 |
畑澤 順 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (70198745)
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キーワード | PET / 分子イメージング / MRI |
研究概要 |
小動物用PET撮像装置の不調により、大動物用PET撮像装置(SET-2300W scanner;島津製作所)や小動物用PET/MRI装置(当施設で開発)の設定を修正し精度を改善させて実験を行っていたが、本年度はさらに高精度な実験を行うことが目指して、本格的な小動物PET-CT装置(Inveon PETシステム)を他研究者、研究グループと共同で導入した。この装置を導入後、装置の設定、キャリブレーション、試験撮像を行うなどの準備を進めた。この新装置を用いてラットおよびマウスに関してF-18 FDG、F-18 NaF、N-13 NH3、C-11 DPA713などのトレーサを用いたイメージングを試験的に行った。その結果、空間分解能の非常に高い画像を得ることができることが明らかになった。 ヒトでの臨床研究では、他施設(独立行政法人国立病院機構静岡てんかん・神経医療センター)において収集した難治性てんかん患者における中枢性ベンゾジアゼピン受容体イメージング(I-123 iomazenil SPECT)を、MRIを用いて画像処理し、我々が以前より開発してきた方法を用いて単位脳体積当たりの受容体結合密度を算出した。この単位脳体積当たりの受容体結合密度分布の異常を評価することによって、従来の視察的なSPECT診断と比して有意に高い発作焦点診断能が得られることを明らかになるなど新規性の高い知見を得た。得られた結果を学会および論文として発表した。 大阪大学医学部附属病院にて正常者ボランティアを対象とする中枢性ベンゾジアゼピン受容体イメージング(I-123 iomazenil SPECT)を行い、上記同様にMRIを用いて画像処理し単位脳体積当たりの受容体結合密度を算出した。その結果、正常な加齢に伴う中枢性ベンゾジアゼピン受容体密度の変化が明らかになった。得られた結果を学会および論文として発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
大阪大学分子イメージングセンターにおいて、モデル動物の実験を行うにあたり、一部の装置の不調が明らかになり使用が困難になったため、代替機を改良することによってモデル動物に関する実験を進めてきた。しかし物理的制約により空間分解能や定量性などの問題を完全に解決することはできず、さらなる精度を追及するために本年度は最新鋭のPET-CT装置の購入を実行した。この装置を設定し、非常に高分解能で精度が高いPET画像と同時にCTによる構造画像が得られることを確認した。高精度な実験システムを構築したことは今後のモデル動物に関する実験を大きく前進させることになり、きわめて重要な進捗であったと考える。 臨床研究においては、てんかん症例における中枢性ベンゾジアゼピン受容体イメージングと、形態画像(MRI)を融合させ、中枢性ベンゾジアゼピン受容体密度が発作焦点で低下することを、in vivoイメージングで評価することで、診断精度が有意に上昇することを示した。我々は以前、pilot studyとしてこのことを発表していたが、本年度は規模を拡大して研究を行うことで、中枢性ベンゾジアゼピン受容体密度の評価の方法論とその意義を明らかにすることができた。このことはてんかんイメージング研究の大きな進展であると考える。この成果を学会で発表し、さらに論文発表を行った。また、健常人を対象として、中枢性ベンゾジアゼピン受容体密度を評価し、加齢に伴う中枢性ベンゾジアゼピン受容体結合の変化を明らかにした。この研究成果をまとめ、学会発表、さらに論文発表を行った。 臨床研究に関しては順調な成果が得られたと考える。
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今後の研究の推進方策 |
当施設には従来までの大型動物用PET装置、小動物用PET-MRI装置に加え、今年度新たに小動物用高分解能PET-CT装置が導入された。この装置の設定および性能の評価は今年度施行終了した。今年度はラットの一過性および永久内頸動脈閉塞を行い、慢性脳虚血モデルラットを作成する。この装置を用いて、O-15 H2O PET撮像法による脳血流、脳酸素代謝の定量評価をpilot研究として行う。施術1ヵ月程度の間に検査バッテリーに基づいて認知機能を評価する。慢性期に再度O-15 H2O PETを施行し、脳血流、脳酸素代謝の変化を評価する。得られたデータを学会にて発表する。
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次年度の研究費の使用計画 |
今年度は新規装置の導入を行ったため、実験計画を一部変更した。次年度の研究を施行するに当たっては、動物購入、試薬購入などの研究費が必要である。また、次年度も実験、解析、研究発表を引き続き行う必要があると考えられ、大阪大学分子イメージングセンター使用料をはじめ解析機器や旅費などの諸費用が必要となる見込みである。
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