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2011 年度 実施状況報告書

浸潤細胞を使って脳梗塞を治す

研究課題

研究課題/領域番号 23592092
研究機関愛媛大学

研究代表者

久門 良明  愛媛大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (80127894)

研究分担者 渡邉 英昭  愛媛大学, 医学(系)研究科(研究院), 講師 (30322275)
研究期間 (年度) 2011-04-28 – 2014-03-31
キーワードcerebral ischemia / microglia / Fractalkine / CX3CR1 / MCP-1 / CCR2
研究概要

これまで我々は、ラット脳梗塞巣でIba1とNG2プロテオグリカンを発現するBINCs (Brain Iba1+/NG2+ Cells)が増殖し、虚血による組織傷害の増悪を防ぐことを示してきた。今回我々は、BINCsの脳梗塞巣へ侵入の機序を解明するために、二種類のケモカイン(MCP-1、Fractalkine)の関与について検討した。 ラット一過性脳虚血モデルを作成し、以下の実験を行った。(1)in vitro:脳梗塞巣から分離したBINCsと一次培養アストロサイト(AC)における、MCP-1とFractalkine、そのレセプターであるCCR2、CX3CR1のmRNA発現量を比較した。また、Boyden chamber法を用いて、BINCsのmigrationを評価した。(2)in vivo: 虚血1、2日目の脳梗塞巣におけるMCP-1、Fractalkine、CCR2、CX3CR1のmRNAの発現量を評価し、免疫組織学的に検討を行った。 その結果、(1)ACではMCP-1とFractalkine、BINCsではCCR2とCX3CR1のmRNAが高発現していた。また、control群と比較し、ACに対するBINCsのmigrationが促進された(P<0.001)。(2)MCP-1、CCR2のmRNAは虚血1日目から発現が高く、Fractalkine、CX3CR1では2日目に上昇した。免疫組織学的に、血管内皮細胞ではMCP-1が発現し、AC endfeetでFractalkineが発現していた。梗塞中心部ではBINCs前駆細胞においてCCR2の発現が観察された。 したがって、脳梗塞巣の血管内皮細胞に発現したMCP-1と、内皮細胞を取り巻くAC endfeetに発現したFractalkineがBINCs前駆細胞の梗塞巣への侵入に関与している可能性が示唆された。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

2011年度は、虚血による組織傷害の増悪を防ぐBINCs(Brain Iba1+/NG2+ Cells)の脳梗塞巣へ侵入の機序を解明するために、二種類のケモカイン(MCP-1、Fractalkine)の関与について、以下の2項目を検討し、結果を得た。(1)in vitro実験にて、脳梗塞巣から分離したBINCsと一次培養アストロサイト(AC)における、MCP-1とFractalkine、そのレセプターであるCCR2、CX3CR1のmRNA発現量を比較した結果、ACではMCP-1とFractalkine、BINCsではCCR2とCX3CR1のmRNAが高発現していた。また、Boyden chamber法を用いて、BINCsのmigrationを評価した結果、control群と比較して、ACに対するBINCsのmigrationが促進されることが明らかになった。(2)in vivo実験にて、虚血1、2日目の脳梗塞巣におけるMCP-1、Fractalkine、CCR2、CX3CR1のmRNAの発現量を評価し、免疫組織学的に検討を行った。その結果、MCP-1、CCR2のmRNAは虚血1日目から発現が高く、Fractalkine、CX3CR1では2日目に上昇した。免疫組織学的に、血管内皮細胞ではMCP-1が発現し、AC endfeetでFractalkineが発現していた。梗塞中心部ではBINCs前駆細胞においてCCR2の発現が観察された。 これらの結果より、脳梗塞巣の血管内皮細胞に発現したMCP-1と、内皮細胞を取り巻くAC endfeetに発現したFractalkineがBINCs前駆細胞の梗塞巣への侵入に関与している可能性が明らかにされ、2011年度の目的を達成できた。

今後の研究の推進方策

多分化能をもつマイクログリアの前駆細胞の浸潤性を高めるケモカインを虚血脳に注入し、経時的に脳を摘出し、浸潤細胞の増加と多分化能をもつマイクログリアへの過程を観察する。そのために、1)ラットに虚血負荷を加え、虚血負荷直後と2日目に、ケモカインを脳内に注入する。2日目以降、経時的に脳を取り出し、抗Iba 1抗体、抗NG2抗体、抗nestin抗体、抗GFAP(glial fibrillary acidic protein)抗体を用いて、Iba 1陽性細胞が、その他の抗体を同時発現するか否かを、免疫組織学的に明らかにする。2)同様に、経時的に脳を取り出し、同抗体を用いて、ウェスタンブロットで、経時的に各種細胞の発現の有無と程度を半定量的に検討する。3)マイクログリアの多能性幹細胞としての可能性を検討するために、各時期の脳より分離したIba 1陽性のマイクログリアを培養し、各種抗体を用いて染色し、ニューロン、アストロサイト、オリゴデンドロサイトへの分化について観察する。その結果、BINCs (Iba 1抗体とNG2抗体陽性細胞) へと変化していく過程が、組織学的および半定量的に明らかとなり、各時期での各細胞への分化が観察できる見込みである。 さらに多分化能をもつマイクログリアの前駆細胞の浸潤を高めるケモカインを虚血脳内に注入することで、神経学的変化や行動学的評価を行ない、その神経保護効果を確認する。そのために、1)ラットに虚血負荷を加え、虚血負荷直後と2日目でのケモカイン注入群とvehicle注入群とを作製し、各群ラットに対して、経時的に神経学的所見や行動学的評価を行なう。2)行動学的評価の終了後、脳を取り出し、脳梗塞の範囲を組織学的に観察する。 その結果、ケモカイン注入群ではvehicle注入群に比して、神経学的重症度が軽度で、行動学的評価で、認知機能障害も軽いことが期待される。

次年度の研究費の使用計画

2012年度は、多分化能をもつマイクログリアの前駆細胞の浸潤性を高めるケモカインを虚血脳に注入して、経時的に脳を摘出し、浸潤細胞の増加と多分化能をもつマイクログリアへと変化する過程を観察する。そのために以下の計画で実験を進める。(1)ラットに虚血負荷を加え、脳梗塞を作製する。(2)虚血負荷直後と2日目に、ケモカインを脳内に注入する。(3)2日目以降、経時的に脳を取り出し、浸潤した細胞が多分化能をもつマイクログリアに変化する過程を観察する。そのために、抗Iba 1抗体、抗NG2抗体、抗nestin抗体、抗GFAP(glial fibrillary acidic protein)抗体を用いて、Iba 1陽性細胞が、その他の抗体を同時発現する様子を、免疫組織学的に明らかにする。(4)多分化能をもつマイクログリアの出現を経時的検討のため、前述の同抗体を用いて、ウェスタンブロットで、経時的に各種細胞の発現の有無と程度について半定量的に検討する。(5)マイクログリアの多能性幹細胞としての可能性を検討するために、各時期の脳より分離したIba 1陽性のマイクログリアを培養し、前述の各種抗体を用いて染色し、ニューロン、アストロサイト、オリゴデンドロサイトへの分化の有無について観察する。 以上の実験を遂行するために、実験動物(ラット)購入費用として500,000円、薬品購入費用として300,000円、各種抗体購入費用として350,000円、転写膜購入費用として100,000円、ガラス危惧購入費用として100,000円(合計1350,000円)を購入する予定である。

  • 研究成果

    (2件)

すべて 2011

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (1件)

  • [雑誌論文] Subcutaneous injection containing IL-3 and GM-CSF ameliorates stab wound-induced brain injury in rats.2011

    • 著者名/発表者名
      Tasuku Nishihara, Michihisa Ochi, Kana Sugimoto, Hisaaki Takahashi, Hajime Yano, Yoshiaki Kumon, Takanori Ohnishi, Junya Tanaka
    • 雑誌名

      Experimental Neurology

      巻: 229 ページ: 507-516

    • 査読あり
  • [学会発表] BINCs(Brain Iba1+/NG2+ Cells)の脳梗塞巣への侵入機序の検討2011

    • 著者名/発表者名
      鄭 菜里、久門良明、渡邉英昭、大西丘倫、田中潤也
    • 学会等名
      第36回日本脳卒中学会総会
    • 発表場所
      国立京都国際会館
    • 年月日
      2011年7月31日

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公開日: 2013-07-10  

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